国土交通省天竜川上流河川事務所(駒ケ根市)は28日、上下伊那地方で管理する全約170基の砂防ダムで進めていた小水力発電の可能性調査の結果をまとめた。147基を実際に調べ、計算上の最大出力が300キロワット以上だったのは9基、200キロワット以上300キロワット未満は8基。事業化検討の基礎資料になるよう、結果を地元市町村に伝えた。同省砂防計画課によると、現地事務所が管理する全砂防ダムを対象にこうした調査をするのは全国でも珍しい。 砂防ダムの段差を生かした小水力発電は、ダム工事などの初期投資を抑えられるといった利点がある。豪雨や土砂流出の際にも安定的に稼働するか―などの課題もあるが、自然エネルギー利用への関心が高まる中、同事務所は昨年度、調査に着手。ダムの高さや流量などから、発電力や建設事業費を試算した。 最大出力が最も大きかったのは、与田切川の飯島第2砂防ダム(上伊那郡飯島町)で380キロワット。年間発電量は1911メガワット時で、一般家庭約530世帯分に当たる。事業費は3億5500万円、1キロワット時当たりの単価は186円。一般的に同250円以下が事業化の目安とされる。 次いで最大出力が大きいのは飯島砂防ダム(同)の376キロワット。七釜(下伊那郡大鹿村)、北又沢第2(飯田市上村)、新宮(駒ケ根市)などが続いた。単価は19基が同250円を下回り、北又沢第2が最も低い140円。最大出力0・7キロワットの尾勝谷第2(伊那市長谷)が6635円で、最も高かった。 流量は、それぞれ最寄りの観測地点のデータから推計し、送電線費用は一律500メートル分で試算した。同事務所は「数値は目安。事業化の場合は個々に詳細な調査が必要となる」としている。 調査対象の砂防ダム数は、市町村別に大鹿村50、伊那市45、飯田市15、駒ケ根市14、飯島町7、下伊那郡松川町と上伊那郡中川村が各6、同郡宮田村3、下伊那郡天龍村1。本体に隙間があって普段は土砂がたまらず、水の落差ができない構造のダムなどは除いた。(長野県、信濃毎日新聞社)
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