新しい年度がスタートした1日午前、県内の企業や団体で入社式などが行われた。円安の進行や株価の上昇で、ここ数年に比べ経済見通しにやや明るさがうかがえる一方、安倍首相が交渉参加を表明した環太平洋連携協定(TPP)の影響が幅広い分野に及ぶと予想される県内経済。企業トップはよりいっそうの奮起を求め、新入社員らは決意と緊張感を新たにしていた。 TPP交渉参加に警戒を強める県農協中央会・各連合会などは、長野市内で新入職員35人の入会式を開いた。中央会の大槻憲雄会長はあいさつで「TPP交渉参加問題や東日本大震災からの復興など課題は山積」とし、「皆さんのエネルギーを農協の発展のためにぶつけて」と求めた。 新入職員を代表してあいさつした全国共済農業協同組合連合会県本部(長野市)の原山祐介さん(22)は、「TPPに参加すれば国内の農業は危機的な状況に陥る」と強調。中央会の深井晴伍さん(22)は式典後、「若い自分たちが農業や県をPRしていきたい」と話していた。 従来型より生産性の高い新型ペットボトル成形機の販売が好調な日精エー・エス・ビー機械(小諸市)の青木高太社長は入社式で、「会社には5年、10年、20年先と将来の目標がある。皆さんも目標を持って日々の仕事に取り組んでほしい」。新入社員5人のうち、的川大志さん(24)は「会社に期待されていることは何か、一つずつ考えて仕事をしたい」と話した。 2月に東京証券取引所第2部から1部に指定替えされ、3月下旬に長野市七瀬中町に完成した新社屋に移転したばかりの電算(長野市)。この日入社した31人に、轟一太社長は「限りない成長を確実にすると決意した」と述べ、「世の中は驚くべきスピードで進化、変化している。クリエーティブたれ、グローバルたれ、貪欲たれ」と呼び掛けた。 円安進行で3月末の株価(終値)が昨年10月末の約2倍に上昇したセイコーエプソン(諏訪市)の碓井稔社長は、新入社員109人に「明るさが見えつつあるとはいえ、世界が大きな激動の渦中にあることは揺るぎのない事実」と強調。「創造と挑戦の気概を持ち、常に自らを高める努力を続けてほしい」と呼び掛けた。 新入社員代表の野中アリア渓(けい)さん(24)は「どれくらい(の期間)でエプソンの社員だと胸を張って言えるのか不安もある」とあいさつ。「一日も早く責任ある仕事を任されるよう、日々のあらゆる業務に全力で励みたい」と意気込んでいた。(長野県、信濃毎日新聞社)
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