下高井郡木島平村と下水内郡栄村が本年度、少子化で閉鎖した小学校や保育園を改修し、若者や子育て世代を対象にした賃貸住宅として活用し始めた。両村では人口減や高齢化が進み、若年層向けアパートは不足がち。公共施設を「再利用」して、定住人口増につなげたい考えだ。8日は栄村の住宅で入居希望の受け付けが始まり、2件の申し込みがあった。県住宅課は、公共施設を改修し公営住宅にした例は「把握する限り、県内ではこの2村だけ」とする。 「新くて過ごしやすく、保育園だったことは気にならない」。木島平村の旧保育園を改修した賃貸住宅「やまぶきハイツ」に今月入居した主婦(30)はそう話す。夫と2人暮らしで、おなかには妊娠10カ月の第1子がいる。これまで村内の一戸建てを借りていたが、村の広報で住宅を知り、入居を決めた。 住宅は2011年度に閉園した旧やまぶき保育園の建物を活用。村は総事業費約1億7千万円をかけて10戸の住宅に改修した。8世帯が入居中で、村内のほか中野市や茅野市からの転入もある。1戸76~92平方メートルで、家賃は4万3千~5万2千円。40歳未満の夫婦や子育て世帯が主な対象だという。 村の担当者によると、村内にはアパートが少なく、飯山、中野両市で暮らして村の企業に働きに来る人もいる。やまぶきハイツの入居は最長9年で、「ゆくゆくは定住につながればいい」と期待する。 栄村は10年度で閉校した旧東部小学校の校舎を8戸の住宅に改修した。総事業費は約1億6千万円。校舎は県北部地震でも大きな被害がなく、「今後も十分使える」と判断した。床面積は68~89平方メートルで家賃は3万5千~4万6千円。村税滞納がないこと、住民票を村に移すことなどが入居条件だ。4日の見学会には約50世帯が訪れた。斎藤家富副村長は「震災後の明るい話題」と話す。入居は5月から。 過疎問題に詳しい高崎経済大(群馬県高崎市)の西野寿章教授(経済地理学)は、学校や保育園を公民館などに転用する例は多いが、住宅とする例は全国でも聞いたことがないとし、「一つの知恵として興味深い」とする。ただ、定住には結び付けるには「雇用をどう生み出すかをセットで考える必要がある」と指摘する。(長野県、信濃毎日新聞社)
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