作家村上春樹さん(64)の新作小説「色彩を持たない多崎(たざき)つくると、彼の巡礼の年」が12日午前、県内の書店にも並び、愛読者らが早速購入した。 松本市深志1の丸善松本店では、入り口正面に新たにブースを設けて60冊余を並べた。午前10時の開店後、来店客が手に取っては、関心深そうにページをめくっていた。 2週間前に予約したという北安曇郡松川村の主婦柳本京実さん(52)は「20年来のファンで今か今かと発売を待っていた。すぐに読むにはもったいないので少し置いてからゆっくり読みたい」。同店の秋山粒志(りゅうし)店長(38)は「売り上げに直結する書籍なのでありがたい。ただ、今週は本屋大賞の発表もあり、発売時期を少しずらしてほしかった」と話した。 長野市末広町の平安堂長野店でも、レジ前に特設コーナーを設置。午前10時の開店直後に購入した同市吉田の自営業横尾修弘さん(61)は村上さんのデビュー作「風の歌を聴け」(1979年)を読んで以来のファンだといい、「(村上さんの作品は)読みやすい文体ながらも奥深さがあり、謎に満ちている。仕事を終えてからゆっくり読みます」と楽しみにしていた。 同店では「過去の作品にさかのぼって読む機会になれば」と関連書籍を集めたコーナーも設けた。 県内の愛読者でつくる「村上春樹ファンクラブ『羊』」の宮坂勝彦さん(65)=千曲市稲荷山=は「メンバーの間では、来月にでも新作について語る機会を設けようという声もある。ことしはノーベル文学賞に選ばれるといい」と話していた。(長野県、信濃毎日新聞社)
↧