県外の大手旅行会社が、拠点を設けるなどして相次いで県内事業を強化している。阪急交通社(大阪市)は長野支店を開設、JTB中部(名古屋市)は長野発着ツアーの通信販売を開始。増える地方のシニア客を狙って現地発着の商品開発を強めようと、これまで手薄だった地域に展開する戦略の一環だ。競合する県内事業者も広告投入の強化などで対抗している。 阪急交通社は1月、長野市南石堂町に支店を開設し、商品企画担当者らが常駐。同社は参加者募集型のツアーの通信販売が主力で、これまでは周辺県の営業所が企画して好評だった商品を長野発着に変更して販売していたが、企画担当者を置くことで、地元の需要に合わせたツアーを充実させる。 第1弾として、長野発着で東京スカイツリーや国会議事堂など都内の名所を回るといったツアーを企画。大東一裕支店長は「以前からの顧客を中心に予想以上に申し込みが多かった」とする。全国の企画担当者のネットワークや大手の仕入れ力も生かして、新規顧客の開拓も進める。 JTB中部は通信販売で初めての長野発着ツアーを3月下旬に投入した。これまでは名古屋発着の商品が中心で、同社は「車や列車で名古屋まで出てツアーに参加するのは大変。年齢が高くなれば、より『わが町』から出発したいと思うはず」(広報室)と説明。通信販売事業の認知度アップも狙う。 「団塊世代」が2012年から次々と65歳を迎えて完全に退職する年代を迎えており、旅行業界はシニア層の需要拡大に期待。15年3月に予定される北陸新幹線長野―金沢間開業で、人の行き来はさらに増えそうだ。こうした中での大手の攻勢に、県内事業者は警戒感を強めている。 長野トラベル(長野市)は、大手のツアーと同様の目的地、価格帯の商品を用意。トラビスジャパン(上伊那郡箕輪町)は、広告投入を増やした。顧客の一層の高齢化を見越して今春、自宅送迎可能なタクシーによるツアー旅行も開始。吉沢博文社長は「各地のバスの乗車場所近くに参加者専用の駐車場も整備してきた。サービス向上で大手を迎え撃ちたい」としている。(長野県、信濃毎日新聞社)
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