インターネットを使った選挙運動を解禁する公選法改正案が12日に衆院を通過し、今夏の参院選以降は身近な地方選挙でも解禁される見通しとなった。有権者の政治参加の促進が狙いだが、解禁により投票率がアップするかは、ネットに親しむ県内の20~30代の間でも見方が割れる。政党や候補者の情報を入手しやすくなる利点を生かすため、「まずは政治そのものへの関心を高める取り組みが要る」との声も聞かれた。 明るい選挙推進協会によると、抽出調査による昨年12月の衆院選投票率は20代が37・89%、30代が50・10%。60代(74・93%)や50代(68・02%)を大きく下回った。投票に行かない若年層の増加は、今回の法改正への動きを強めた理由にもなっている。 長野市川中島町原の会社員宮崎由紀美さん(31)は、ネット選挙解禁で投票率が上向くとみる。共働きで1歳の女児を育てており、候補者の街頭演説に足を運ぶのは難しかった。「ネット上に街頭演説の録画があれば、夜でも見ることができる。子育て世代にはありがたい」と話す。 会員制交流サイトで知り合った20~30代の仲間と月1回程度、経済対策や子育てなど、政策の勉強会を開いている上伊那郡の男性(37)も「ネットがさらに有効な情報収集の場になる」とみる。 一方、長野市三輪で喫茶店を営む今井雄大(たけひろ)さん(35)は、投票率向上に貢献するとの見方には懐疑的だ。「ネットでの情報収集は興味がある分野に偏りがち。情報を得る手段は広がるかもしれないが、逆に有権者の視野を狭めかねない」と指摘する。 国政選挙などで模擬投票を実践している赤穂高校(駒ケ根市)の春日雅博教諭(52)も「基本的に政治に関心がなければ情報にはアクセスしない」と話し、選挙を有権者の身近な暮らしに引きつけ、考えてもらう取り組みが必要だとしている。 南佐久郡川上村の農業井出静也さん(65)は普段、電子メールを使っているが、「メールじゃ誰が書いたか分からない」。交流サイト「フェイスブック」などのソーシャルメディアには縁遠く、「人の目の前で演説して、会話して、反応を見る。それが政治家じゃないのか」と話した。 総務省の2011年末の調査によると、全国のインターネット利用率は40代までは9割を超えるが、年代が上がるにつれ低下。県内全体の利用率は全国平均より5・2ポイント低い73・9%にとどまるが、立候補者にとってはネット対応が欠かせなくなるとの声は多い。 ある県関係国会議員の秘書は「今後は急に持ち上がった話題にも、ネット上ですぐ見解を示せるようになる」と話す一方、支持者回りなど従来の選挙手法とのバランスを取れるのか、との懸念も示した。 次回参院選から、県選管のホームページ(HP)に、各候補のHPアドレスが掲載される見通し。県選管は法改正について「一般の県民に関わるため、今後、何らかの周知が要る」とする。ただ、ネットを活用しない候補がいる場合、選管による「ネット選挙」の周知活動そのものが「公平性に欠ける」と指摘されかねない―と懸念。総務省の見解を注視している。(長野県、信濃毎日新聞社)
↧