伊那市高遠町で子どもたちの共同生活塾を運営する宇津(うづ)孝子さん(52)が、児童福祉法に基づくファミリーホーム「うずまきファミリー」を開所した。親がいない子や、経済的理由などで親と暮らすのが難しい子を家庭的な環境で養育する場で、県内ではまだ2カ所だけ。宇津さんは「子どもたちが人と関わりながら外の世界に向かって成長していくための拠点にしたい」としている。 ファミリーホームは2009年度に制度化。里親制度と並び、家庭に子どもを迎え入れる児童養護の形態だ。里親が4人まで養育できるのに対し、同ホームは6人まで受け入れ可能。里親として2年以上、同時に2人以上を養育した経験があるなどの条件を満たした人が運営できる。 宇津さんは、NPO法人「フリーキッズ・ヴィレッジ」理事長として04年から共同生活塾を運営。09年に里親となり、現在は2~16歳の3人を養育している。ファミリーホームを開所するため、塾の拠点としている古民家を改装し、浴場を新たに設けた。 浴場の建物は床面積約13平方メートル。大人が3、4人入れる円形の浴槽を備えた浴室と脱衣場がある。塾と交流する1級建築士遠野未来さん(50)=東京=が曲線を基調に設計。建材は県産のヒノキ材と、赤土を混ぜたしっくいで、子どもが安心感を持てる空間にした。給湯には太陽光発電やまきを使う。 ファミリーホームで暮らす中学2年の女子(13)は「広々としてデザインも凝っている。みんなで入るのが楽しみ」。宇津さんは「子どもには安心して過ごせる家庭が必要。地域に開かれた場にして、社会全体で子どもを育てる環境をつくりたい」と話す。 県こども・家庭課によると、東御市でも今月、ファミリーホームが開所した。厚生労働省家庭福祉課によると、全国では177カ所(昨年10月1日時点)で、千カ所以上の整備を目指している。(長野県、信濃毎日新聞社)
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