21日前後に県内全域であった積雪や降霜、低温で、中信地方を中心に果樹に深刻な被害が出ていることが、各農協などへの取材で24日分かった。開花期に重なったナシやモモを中心に被害が広がっており、生産量が全国2位のリンゴも生育が懸念されている。松本ハイランド農協(松本市)は同日時点の被害額を約5億3千万円、塩尻市凍霜害対策本部は約2億円、あづみ農協(安曇野市)は数億円の被害が出るとしている。 県農政部は、同地方で被害が広がった理由について「(降雪後の)22日朝に晴天となり、放射冷却現象で強く冷えたため」とみている。 果樹は、子房(しぼう)(実になる部分)や花に表面上の問題がなくても、内部が凍害、霜害を受けている場合があり、他地域の果樹を含め被害はさらに拡大する可能性がある。 松本ハイランド農協管内では、松本市今井などの果樹地帯全域で被害を受け、ナシやモモの花が変色した。開花前のリンゴも花芽に被害を受けているとみられ、果樹の多くの品目で実の成長が止まる影響や、実が変形するなどの品質低下が予想されるという。同農協は、凍霜害や台風で果樹4品目(ナシ、リンゴ、モモ、ブドウ)の取扱量が前年産より26%減った2004年産を上回る被害になると見通す。 松本市波田の果樹農家西牧利次さん(68)は、約20アールのナシ畑の9割が被害を受け、「こんなにひどいのは初めて」。ことしの収益はほぼ見込めないが、来年に実をならせるためには農作業を怠ることができないとし、「ことしいっぱい辛抱するしかない」と声を落とす。 他の果樹産地では、「実際に実がなってみないと被害は正確に分からない」(飯田市のみなみ信州農協)。みなみ信州農協の別の担当者は「今月は低温となる日が断続してあり、被害が徐々に明らかになってくる可能性がある」とする。ながの農協(長野市)の担当者も「経過を見ないとつかめない」としている。(長野県、信濃毎日新聞社)
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