北アルプスなど県内山岳地域で春の大型連休中(4月下旬から5月初め)に発生した遭難事故の死者は、昨年までの5年間で計22人に上り、このうち疲労して低体温症で死亡する「疲労凍死」が12人と半数以上を占めたことが26日、県警のまとめで分かった。この時期の山岳地域は天候が急変しやすいのが特徴で、県警などは天候の判断を誤ったり、冬山装備が不十分だったりして事故につながったとみており、27日からの大型連休に入山する登山者にチラシを配り、注意を呼び掛ける。 県警地域課によると、昨年までの5年間、春の大型連休中に起きた遭難事故は76件で死者は22人。疲労凍死のほか、滑落の死者が7人、雪崩が3人だった。疲労凍死の死亡事故はいずれも北アルプスで、昨年は北ア白馬岳(標高2932メートル)付近で6人パーティー全員が一度に疲労凍死する惨事があった。 山岳の気象に詳しい気象予報士の猪熊(いのくま)隆之さん(42)=茅野市=は、県内山岳は近年、大型連休中に天候が急変する傾向が続いており、「朝晴れていても、すぐ吹雪になることもある」と指摘する。 猪熊さんによると、ことしの北アなど県内の山岳地域の天候は27日に荒れた後、いったん回復する。5月に入ると県内上空に強い寒気が入り込むため、場所によって吹雪になることもあり、「低体温症になる可能性もあるので十分な注意が必要」と話している。 昨年、6人死亡の白馬岳の遭難事故で救助に当たった北ア北部地区山岳遭難防止対策協会の降籏義道救助隊長は、近年は「冬山」との認識なしに大型連休中の山を訪れる登山者が増えていると指摘。「十分な予備日を持ち、天候が悪化した場合は山小屋で待機するなど、余裕を持った行動計画を立ててほしい」と求めている。(長野県、信濃毎日新聞社)
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