下伊那郡阿智村の「満蒙(まんもう)開拓平和記念館」の入館者数が9日、4月25日の開館から延べ3千人を超えた。来館者は中高年層が中心だが、大型連休中は家族連れも目立った。同館は当初の事業計画で年間の入館者数を5千人と見込んでおり、「予想以上の反響」としている。 予約の団体客などが訪れた9日の入館者は、一日としては最多の403人に上り、開館以来の合計は3283人となった。下高井郡から旧満州(中国東北部)に入植した「万金山(まんきんざん)開拓団高社郷(こうしゃごう)」の元団員らでつくる「高社郷同志会」の会員ら18人も来館。旧満州で団員が集団自決した同開拓団について記されたパネルなどを見つめながら、苦難の歴史に思いをはせた。 18人の一人で、元団員の高山すみ子さん(89)=下高井郡木島平村=の体験も、館内の「証言」コーナーなどで紹介されている。同開拓団の逃避行のルートを示した地図や、団員の集合写真などを目にした高山さんは「(集団自決や逃避行では)首を絞めて子どもが殺されたり、川に流されたり…。現実は厳しかった。思い出すと切ない」と言葉を詰まらせた。 同じく元団員で、同志会事務局長の滝沢博義さん(79)=長野市=はパネルの前で「(集団自決が)悔しい」と目頭を押さえた。「よく建てていただいたと思うが、多くの団員が生きているうちに完成したらもっと良かった」と語った。(長野県、信濃毎日新聞社)
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