先天性異常の一つで唇や口の中の上部などが割れた状態で生まれる「口唇裂(こうしんれつ)」「口蓋(こうがい)裂」の患者を治療する県内初のセンターについて、県立こども病院(安曇野市)、信州大病院(松本市)、松本歯科大病院(塩尻市)は15日、「口唇口蓋裂センター」の名称でこども病院内に7月1日開設すると正式発表した。3病院が連携し、手術や歯の矯正、発音指導など多岐にわたる治療・訓練に一貫して対応する。 治療対象は口唇裂、口蓋裂のほか、歯茎が割れる顎裂(がくれつ)。治療や訓練には、形成外科、口腔(こうくう)外科、矯正歯科、言語聴覚士、耳鼻咽喉科、小児科など多くの部署や専門家が関わるが、すべてを備えた医療機関は県内にはない。 同センターは、センター長を務める藤田研也・こども病院形成外科副部長らが中心になり事務局機能を兼務。こども病院は手術や言語治療、信大病院は成人期ケアや手術、松本歯科大病院は歯の矯正と、それぞれの得意分野を生かして治療に当たる。 藤田氏は会見で「医療施設間のつながりを維持、発展させたい」と強調。3病院以外の医療機関との連携を図る拠点としての役割を果たしていくほか、患者や家族からの総合的な相談窓口となると説明した。 こども病院と信大病院の医師が患者の居住地に近い県内の別の病院へ出張して手術を手伝うことも想定。発音の矯正が必要な場合は言語訓練ができる施設を紹介したり、地域の医療機関からの患者受け入れに応じたりもする。 日本口蓋裂学会の川上重彦理事長は「どの病院も連携して治療をしているが、複数の病院が組織としてセンターを作ったのは全国的にも聞いたことがない」と話している。(長野県、信濃毎日新聞社)
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