信州大病院(松本市)は6月1日、「成人先天性心疾患センター」を県内で初めて開設する。生まれつき心臓に病気のある「先天性心疾患」の子どもが治療を受けて成長した後の診療を、信大の循環器内科など3診療科と、県立こども病院(安曇野市)が連携して担う。このような患者は成人後も小児科医が継続して診ることが多いが、糖尿病、高血圧症など生活習慣病の合併や妊娠出産といった小児科医では対応できない問題もあり、大人の心臓を専門に診る循環器内科などの関わりが必要とされていた。 先天性心疾患の患者は、子どものころに治療や手術に成功しても、もともとの心臓の形が複雑で不具合が生じやすいなど経過観察が必要な人が多い。再手術が必要だったり、成人になって不整脈が起こりやすかったりもする。開設20年で約6000人の心臓病患者を手術やカテーテル治療で救った県立こども病院でも、成人の受診は多く、循環器小児科では「3割程度は18歳以上」(安河内(やすこうち)聡部長)。安河内部長は「成人になった先天性心疾患の人を総合的に診てくれる施設はこれまで県内になかった」とする。 同センターは信大の循環器内科、心臓血管外科、小児科の医師計5人で構成し、うち専任が1人。新しい建物は設けず、既存の先端心臓血管病センターで週1回専門外来を開き、入院も受け付ける。同センター内では、小児科医が成人先天性心疾患を外来で担当しているが、あまり知られておらず、循環器内科との連携もなかった。 新設のセンターでは、3科の医師に加えてこども病院の医師も協力して情報を交換し、治療方針を話し合う。「両病院の得意分野を“いいとこ取り”して、患者に最適な医療を提供したい」と、副センター長になる元木博彦・循環器内科助教。例えば先天性心疾患の再手術ならこども病院が、大人がかかる心筋梗塞などのバイパス手術なら信大病院が行うことが考えられるという。 聖路加国際病院(東京)の丹羽公一郎・心血管センター循環器内科部長は、複数の診療科が連携して患者を診るセンターは国内で同病院など数施設しかなく「長野県の動きは先駆的」と評価する。 センター設置は、数年前から患者家族会の「全国心臓病の子どもを守る会県支部」が、県立こども病院の医師とともに信大側に働き掛けていた。支部長で、高校生の長男が県立こども病院で手術を受けた大沢麻美さん(38)=上田市=は「自分の子どもの体をよく知る県立こども病院の先生と、成人の体に詳しい信大病院の先生が情報を共有してくれれば安心。患者家族の側からも情報提供などで協力したい」と話している。(長野県、信濃毎日新聞社)
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