日本が環太平洋連携協定(TPP)に参加し関税を全面的に撤廃した場合、県内の農業生産額(2010年は約2700億円)は、海外からの安い農産物の流入などで500億円前後減少する見通しであることが19日、県の試算で分かった。一方、10年度に実質8兆9056億円だった県内総生産は製造業などに輸出によるプラス効果が出て、貿易自由化後、10年程度で600億円台の押し上げ効果があると見込んでいる。 農産物のうち、特にコメと牛肉など畜産業への打撃が大きいとみられる。県は最終調整した上で試算結果を20日に正式決定し、TPPをはじめ国際的な経済連携への対応を協議するため庁内に設置した対策会議で公表する。 県の試算は、政府が3月、TPP交渉参加の正式表明に合わせて公表した試算方法を基に算出。政府試算は、関税をすべて即時撤廃し追加的な国内対策を考慮に入れない前提で、農業生産額が約7兆1千億円から3兆円減少するとした。対象は関税率が10%以上で国内生産額が10億円以上の33品目の農林水産物。輸入品と競合する国産品は原則として安価な輸入品に置き換わると仮定した。県は、県内で生産されている品目を選んで試算した。 政府試算は経済全体で消費が3兆円、輸出が2兆6千億円、投資が5千億円で計6兆1千億円のプラス影響を見込む一方、安価な製品の輸入で2兆9千億円のマイナス効果があると試算し、差し引き3兆2千億円の実質国内総生産(GDP)拡大を見込んだ。県は、県内総生産の押し上げ効果を、国試算の消費、投資、輸出、輸入に占める県内の割合から試算した。(長野県、信濃毎日新聞社)
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