松本市の柔道教室で2008年5月に当時小学6年の男児が投げられて重い障害が残り、長野検察審査会(検審)が投げ技をかけた元指導者の男性(40)を起訴すべきだと議決した事件で、長野地裁が検察官役に指定した弁護士2人は20日、元指導者を21日に業務上過失傷害罪で同地裁に起訴することを決めた。同検審はことし3月6日、事故は回避できたとして、長野地検が同罪で2度にわたって不起訴(嫌疑不十分)とした元指導者を起訴すべきだ、と議決していた。 元指導者の弁護人は20日、取材に「08年の段階では、(事故の)予見可能性も結果回避可能性もなかったと言わざるを得ない。(公判では)無罪を主張する」と述べた。沢田君の母佳子さん(42)は「正式な起訴を待ち、記者会見で話をしたい」とと話した。 09年5月の検察審査会法改正に基づく強制起訴。県内での強制起訴は初めて、全国では8件目。今回の事件では、業務上過失傷害罪の公訴期限(5年)が今月26日に迫っており、検察官役の徳竹初男弁護士、青木寛文弁護士(ともに長野市)が補充捜査をしていた。 障害が残ったのは松本市波田の沢田武蔵君(16)。同検審は3月の議決で、小中高校生にスポーツの指導をする際には、脳が揺れやすく、急性硬膜下血腫を起こしやすいことを念頭に置く必要があると指摘。危険を伴う柔道の指導者は、頭部を打たなくても急性硬膜下血腫などで重大な結果が生じることを知り得たと判断。元指導者には予見可能性があり、事故の回避は可能だったと結論付けた。(長野県、信濃毎日新聞社)
↧