大北農協(大町市)が経営している「北部工機燃料センター」(北安曇郡白馬村)で2008年3月までの1年5カ月の間、当時勤務していた女性職員が同農協の現金計943万円を着服していたことが22日、分かった。同農協はこの女性職員が全額を弁済したことなどを理由に告訴はせず、同年6月に諭旨解雇処分とした。組合員には説明していない。同農協では17日、別の女性職員が275万円を着服した不祥事が明らかになったばかり。 西山隆芳組合長は、前回の着服が明らかになった後の取材に対し「(他に未公表の)不祥事はない」と説明していたが、22日の取材に対しては、一転、事実関係を認め「組織を守るためだった。今後は不祥事が起きればすべて発表する」と話した。同農協のコンプライアンス(法令順守)や情報公開の姿勢が問われる事態となっている。 同農協によると、元職員の女性は同センターで事務を担当。06年11月2日から十数回にわたり、請求書や伝票を偽造して経理担当に提出し、同農協の現金計943万円を着服していた。現金は生活費などに充てていた。一方、自分や夫に対する請求書を偽造して、自分の給料やボーナスで着服分を埋め戻す手口を繰り返し、発覚を免れていた。 08年3月、元職員が偽造した夫に対する95万円の車検料の請求書について、経理担当者が「車検料としては高すぎる」と不審に思い調査。数カ月前にも夫への車検料の請求書が見つかり、請求書の偽造、着服が判明した。 同農協は、同センター長らによる経理のチェックがずさんだったとして、役員や同センター長ら5人を減給処分。経理のチェックの徹底などを職員間で確認したという。ただ、「生活苦から起こした不祥事で元職員の勤務態度が誠実だった」(山田高司専務)などとして、組合員への説明や一般への広報はしなかったとしている。(長野県、信濃毎日新聞社)
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