2011年3月12日の県北部地震に見舞われた下水内郡栄村で今春、水田の復旧が全て終わり、村は本格的な田植えの時季を迎えている。村によると、水田を含む村内の農地約300ヘクタールのうち、70ヘクタールに地面がひび割れたり、沈下したりする被害が出た。約13ヘクタールは昨年も作付けできなかったが、復旧工事はことしの田植えに間に合った。 「やっぱりいいもんだね」。25日、新緑に囲まれた傾斜地にある水田で田植えをしていた同村森の広瀬鶴雄さん(76)はそう話した。3年ぶりに、所有する3・3ヘクタールの水田全てで田植えができるようになったという。田植え機に乗り、丁寧に水田を回って苗を植えた。 村によると、県北部地震で村内の田畑832カ所、水路134カ所に被害が出て、農業関連の被害額は27億円余りに上った。 広瀬さんの水田もひび割れたり、あぜが崩れたりして、2ヘクタールほどはコメを作ることができなくなった。「(地震後に)雪解けした田んぼを見てもう駄目だと思った」と広瀬さん。2ヘクタールは昨年7月に復旧したが、田植えの時季に間に合わずに初めてソバを栽培したという。 広瀬さんと妻ヤスさん(77)は1週間ほどかけて約50枚ある水田に苗を植える予定で、作業は連日、早朝から夕方まで続く。ヤスさんは「家に帰るとくたくた。でも、家にいてもやることがないし、お弁当を外で食べるのも楽しい」。3年ぶりの忙しさを喜んでいる様子だった。(長野県、信濃毎日新聞社)
↧