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人と「人慣れ」猿 「追い払い」めぐり上高地で知恵比べ

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 北アルプス上高地(松本市安曇)一帯で昨年以降、「人慣れ」が進むニホンザルが観光客を威嚇したり、遊歩道にふんをしたりする被害が目立っている。環境省は、観光客が持つ食べ物を奪うなど人に危害を加えるようになりかねないとして、ことし初めて猿を追い払う定期的な巡回を開始。だが、猿は巡回時間を避けて観光客の前に出てくるようになっている。「人慣れ」が進まないよう対策を強める同省と猿の「知恵比べ」が続いている。  17日午後、同省上高地自然保護官事務所の自然保護官補佐、佐々木政喜さん(32)は、猿の目撃情報を受けて約1キロ離れた宿泊施設に急いだ。佐々木さんが着くと、数十匹の群れは一斉にやぶの中へ。観光客と職員をはっきり見分けているようだ。佐々木さんは猿に向かって電動ガンで生分解性の弾を放った。だが、その群れは30分ほどすると少し離れた遊歩道に現れた。ベンチなどに乗った猿を、観光客らは間近で「かわいい」と喜び、写真を撮っていた。  佐々木さんが手にした電動ガンは殺傷能力はないが、観光客を驚かせないようごみ袋で覆ってある。「『猿を殺しているのか』という観光客もおり、その都度説明して理解を求めている」と話す。  同省によると、上高地には以前から約40匹と約80匹の群れがいたが、2009年に約10匹の群れが新たに確認された。宿泊施設が集まる小梨平から田代橋までの一帯では07年から、自然公園財団上高地支部とともに重点的に追い払いを始めた。  ことしは、一部の猿に付けてある発信機の情報を基に群れを追跡して追い払う定期巡回を実施。観光客にも分かるよう「サル追い実施中」と記したベストも用意した。追い払い実施日数は7月末~10月中旬だけで約70日に上り、昨年1年間の5倍となった。その結果、遊歩道上のふんが減るなどの効果は出たが、しばらくすると猿は巡回時間外に現れたり、ベスト姿を見て逃げたりするようになった。最近は定期巡回を減らし、目撃情報を受けて小まめに駆け付けるようにし、ベストもあまり着けなくなった。  追い払い指導に当たる民間の環境アセスメントセンター北信越支社(松本市)の市川哲生課長は、猿の行動パターンを変えるには3~5年かかると指摘。「人間の食べ物の味をいったん覚えると、無理をしてでも取りにくる。恐怖心を植え付けるため、観光客に紛れて追い払うのも手段の一つ」と話す。佐々木さんは「間近の人が何もしないと猿は恐怖感を持たなくなる」とし、猿に近づいて写真を撮ったりしないよう、観光客にも理解を求めている。(長野県、信濃毎日新聞社)


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