しなの鉄道(上田市)は4日、2012年度決算を発表した。輸送人員は前年度比0・3%増の1007万4476人で、開業以来初めて2期連続して増加。運賃収入は0・7%減の22億5100万円、売上高に当たる営業収益は0・8%増の28億1600万円。将来に車両を廃棄する際にアスベスト(石綿)を除去する費用約7千万円を引当金として計上したことなどから、純利益は41・5%減の1億2200万円となった。 輸送人員のうち、切符を買って乗る定期外利用は0・2%増の295万人。定期券利用は通学が1・8%増の417万5千人、通勤が1・6%減の294万8千人だった。同社は通学利用が増えた理由について、12年4月に屋代高校付属中学校(千曲市)が開校したためと説明。通勤利用の減少は、団塊の世代が定年を迎え、退職者が増えたためとみている。 運賃収入の減少は、割引率の高い6カ月定期券の利用が増えたためという。 現在走っている「115系」30両分の石綿除去費や、4月に引退した「169系」を廃棄する場合の費用、15年度にJR東日本から信越線長野以北を引き継いで開業する「北しなの線」の開業準備費として計約1億円を計上。営業利益は1億円余り減少し、547万円余。また、中軽井沢駅周辺の土地売却益約9千万円を特別利益に計上した。 藤井武晴社長は記者会見で「営業努力の成果で目標の輸送人員1千万人を達成できた。将来に備えた出費はあったが、経営に大きな問題はない」と話した。 また、同日開いた取締役会で、北しなの線沿線の上水内郡飯綱町、信濃町を引受先とする総額5600万円の第三者割当増資を行うと決めた。役員人事では、取締役に運輸部担当部長の氷熊(ひぐま)武文氏を新任、非常勤監査役に山村弘・埴科郡坂城町長を新たに選んだ。いずれも18日の株主総会で正式決定する。(長野県、信濃毎日新聞社)
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