塩尻市木曽平沢の「木曽漆器工業協同組合」が、漆にステンレスの粉末を加えることで、磁石に付く木製漆器を開発した。金属に漆を塗れば磁石に付く器はこれまでも作れたが、木製の品ではできなかった。下地の強度が高められやすい利点も判明、コスト削減につながる可能性がある。特徴を生かした商品開発を目指す。 漆器の売り上げが減る中、新しい可能性を探ろうと、鶴見大(横浜市)と2010年から進めた共同研究の成果だ。ステンレスの板に漆を塗る方法を研究していたところ、漆に粉末を加えて磁石に付くようにする方法を見つけた。昨年10月に特許を申請した。 木曽平沢の漆器は、地元産の「さび土」などを混ぜた漆を使い、丈夫なことでも評価が高い。木地に塗る工程を5回ほど繰り返して下地を作っているが、ステンレス粉末入りの漆だと2回ほどで同程度の強度になった。このため、作業や漆の量が減り、価格を抑えられる可能性がある。品質も均質化しやすくなるという。 漆器職人の岩原裕右さん(34)らが磁石が付く壁掛けや、座卓などを試作した。磁力でトレーからずれにくい器なども考えられるという。同組合専務理事の小林広幸さん(55)は「さまざまな人の知恵を借りて、企業とも協力して開発を進めたい」と話している。(長野県、信濃毎日新聞社)
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