下高井郡山ノ内町で、夏から秋にかけて志賀高原の自然をトレッキング客らに解説する「志賀高原ガイド組合」への派遣要請が急速に伸び、ガイド不足に陥っている。2011年3月の東日本大震災を機に、関東地方の小中学校を中心に、林間学校の行き先を東北地方から志賀高原に振り替えたところが多く、依頼が増えているためだ。スキー観光にかつての勢いがない中、雪のない「グリーンシーズン」の誘客は、県内観光振興の大きな課題。有数の観光地・志賀高原のガイド不足解消を含め、受け入れ態勢の充実が急務となっている。 「ことしも個人のお客さんをお断りするケースが起きそう」。同組合の事務局を務める志賀高原観光協会の三ツ橋士郎さん(27)は、この夏のガイド派遣要請をパソコンで確認しながらこう漏らす。 同組合は、志賀高原の自然や歴史を伝え、安全に楽しんでもらうため03年度に発足。池や湿原、原生林などを楽しめる18のコースを設定し、6~10月にトレッキング客らを案内している。当初4千人弱だった取り扱い人数は、11年度に初めて1万人を超え、12年度は約1万700人と過去最高を記録=グラフ。ことしも同程度の利用が見込まれる。同協会の野口晃一事務局長は「原発事故を気に掛けて(林間学校の)場所を変える学校が多く、それが各宿の受け入れ努力もあり定着してきているのだろう」とみる。 だが、夏の誘客に力が入る一方でガイドの養成は間に合っていない。三ツ橋さんによると、ガイドは07年に15人いたが、減少傾向で昨年度は11人に。組合発足から10年がたち、ベテランガイドが引退したり、5月中旬から10月末まで約半年の雇用契約であるため、年間を通して働ける他の職に就いた人もいる。ことしは新人ガイドの日当を7千円(交通費別)と約1割アップ。新たに30代男性2人を採用したが、まだ不十分という。 県観光企画課が昨年9月にまとめた11年度の学習旅行実態調査では、林間学校、スキー修学旅行などで県外から県内を訪れた児童・生徒数は71万人余で、前年度比5・2%と3年連続で増加した。「志賀高原・北志賀高原」は県全体の4分の1余を占め、県内で最も多い。野池明登・県観光部長は「志賀高原を含めスキー場を抱える地域に『グリーン期』にいかに来てもらうかは大きな課題」とする。(長野県、信濃毎日新聞社)
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