インターネットを利用した選挙運動が解禁される参院選が間近に迫り、県警は27日に設置した違反取締本部にネット犯罪専門の捜査員を初めて加えるなど、態勢を強化して備えている。短文投稿サイト「ツイッター」や交流サイト「フェイスブック(FB)」、電子メール、ホームページ(HP)など、膨大な情報の中から違反を見つけ出す作業。経験のない捜査に困惑する捜査員もいるが、県警は県民にも情報提供を呼び掛けて本番に臨む構えだ。 4月に改正された公選法はネットを選挙運動の手段に加えたが、有権者が特定候補への投票を電子メールで呼び掛けたり、候補者や陣営が相手の同意を得ずに投票依頼の電子メールを送ったりすることは禁じた。県警はこれらの他、候補者のHPなどの改ざん、候補者らへの誹謗(ひぼう)中傷、候補者に成り済ました書き込みなどを悪質な違反と位置付け、監視を強める。 同本部に新たに加えたのは、ネット犯罪の捜査が専門のサイバー犯罪対策室、画像データ解析などに当たる情報通信部の捜査員。捜査2課の捜査員もFBなどの機能について知識を積み重ねてきたという。 ただ、ある捜査員は「無数の書き込みから、選挙違反に該当するものを見つけるのは難しい」。有権者によるメールでの投票呼び掛けについて「個人のパソコンを一つ一つ調べる訳にもいかない」と話す捜査員もいる。捜査の端緒を得るのは簡単ではなく、県警はメールで情報提供を受ける窓口を県警HPに設けた。 ネット選挙が注目されているものの、県警は従来の買収、供応といった違反摘発にも引き続き力を入れる。複数の捜査関係者が「選挙運動の『場』は広がったが、端緒をつかめば捜査手法は変わらない」などと話している。 一方、県選管はネットを使い慣れた若者世代への注意喚起を重視している。担当者は「若い人がうっかり違反する可能性もある」とみる。候補者などから送られた投票依頼のメールを、何げなく知人に転送してしまうといったケースだ。 このため、県選管は参院選の公示前後に県内全ての大学、短大、専門学校に禁止項目を知らせるチラシを配布する予定。もともと選挙運動ができない高校生らにも注意を呼び掛ける必要があるとして、全高校にチラシを配る。 県選管には今のところ、ネット選挙に関して立候補予定者や有権者からの問い合わせはほとんどないという。県選管は政党や各陣営が入念な準備を重ねた一方、「有権者はまだ参院選への関心が高まっていないためではないか」とみている。(長野県、信濃毎日新聞社)
↧