北アルプス涸沢(からさわ)の山小屋で働く人たちに焦点を当てたドキュメンタリー映画「小屋番 涸沢ヒュッテの四季」が完成した。厳しい自然環境の中で大家族のように暮らしながら山小屋を守る姿を生き生きと描いている。ヒュッテ主催の完成上映会が8日、松本市で開かれる。伊勢真一監督(64)=東京=は「山と共に生きる人間の美しさを見てほしい」と話している。 ヒュッテは標高2310メートルの涸沢カールにあり、目前に北穂高岳(3106メートル)や奥穂高岳(3190メートル)がそびえる。3棟に180人を収容。シーズンを通じてオーナーの山口孝さん(65)を含め20~60代の男女約20人が働く。 映画の上映時間は69分。雪に埋もれた建物をスコップや除雪機で掘り出す小屋開け、夏や秋の混雑時の食事準備、遭難救助、登山道の整備など日常の仕事を丹念に記録した。「男衆」「女衆」と呼ばれる従業員が就寝前にくつろいだり、仕事への思いを語る場面もある。高山植物の花、満天の星空、真冬の雪崩なども見どころだ。 伊勢さんは、小児がん治療を続ける医師の姿を追った「大丈夫。―小児科医・細谷亮太のコトバ」(2011年)、東日本大震災被災地に暮らす人々を訪ね歩く「傍(かたわら)~3月11日からの旅」(12年)など、長期取材を重ねる「ヒューマンドキュメンタリー」の手法で知られる。山を扱う作品は初めてで、昨年8月~今年4月に4回、ヒュッテに滞在。「小屋番たちの表情に魅せられ、撮りたい気持ちが高まった」と言う。 映画製作は、ヒュッテ会長で「親分」こと小林銀一さん(82)が発案。山口さんと、穂高連峰の穂高岳山荘で働く映像作家の宮田八郎さん(47)が伊勢さんに依頼した。 完成上映会は午後6時半からMウイング6階ホールで。伊勢さんも来場する予定だ。入場無料で定員360人。申し込み不要だが、満席で入場できない場合がある。問い合わせは涸沢ヒュッテ(電話090・9002・2534)へ。(長野県、信濃毎日新聞社)
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