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鳥居清長の「新作品」 日本浮世絵博物館所蔵の版画

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 松本市島立の日本浮世絵博物館が所蔵する歌舞伎舞台を描いた作品が、江戸時代の浮世絵師鳥居清長(1752~1815年)の版画「出語(でがた)り図」で、作品目録に載っていない新たな作品であることが分かった。浮世絵に詳しい大和文華(やまとぶんか)館(奈良市)館長の浅野秀剛(しゅうごう)さん(62)が調べた。浅野さんによると、清長の新たな出語り図が見つかるのは戦後初という。  出語り図とは、物語を語る太夫(たゆう)や三味線弾きの前で、歌舞伎役者が踊る様子を描いた作品のこと。今回の作品は大錦(おおにしき)版(縦38・5センチ、横26センチ)の版画。1789(寛政元)年夏に江戸で行われた歌舞伎興行の様子を描いている。  ともに人気歌舞伎役者の3代目瀬川菊之丞と浅尾為十郎がそれぞれ、親子という設定の山姥(やまんば)と快童丸を演じた。浄瑠璃の流派「富本節(とみもとぶし)」の家元富本豊前(ぶぜん)太夫らが、役者の背後で語りをしている。役者や演技の内容と、歌舞伎資料を照合し、浅野さんが年代を特定した。  清長の出語り図はこれまでに、1782~89年春に作られた40種類前後が見つかっている。浅野さんは「清長が描いた大きな作品は(出語り図も含めて)ほとんどリスト化されていると思っていた」と驚く。「まだ新たなものが出てくる可能性がある」と期待した。  浅野さんによると、1780年代後半に清長は鳥居家を継ぎ、歌舞伎の看板制作などに忙しくなっていく。今回の作品は、現時点で清長の最後の出語り図。この作品の数年後に、浮世絵師喜多川歌麿が全盛期を迎える。浅野さんは「浮世絵版画の第一人者の代替わりを象徴する絵ともいえる」と話した。  同博物館のコレクションは約10万点あり、松本の豪商酒井家が江戸時代から収集してきた。作品は、1982(昭和57)年の同博物館設立当初から所蔵している。酒井邦男代表理事(65)は「貴重な作品を所蔵していたと分かり、うれしい」と喜んだ。(長野県、信濃毎日新聞社)


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