1989年のオウム真理教(当時)による坂本堤弁護士一家殺害事件で、95年に大町市内で遺体が見つかった長男龍彦ちゃん=当時(1)=を悼む演奏会が24日、市内の保育園などであった。ことしはオウム真理教による事件の最後の特別手配犯が逮捕された節目。一家と親交のあった日本フィルハーモニー交響楽団のバイオリン奏者松本克巳さん(59)=東京都小平市=らが思いを新たに演奏した。 堤さん=当時(33)、妻都子さん=同(29)、龍彦ちゃんの一家3人が失踪した時から支援を続けている有志らは、ことしも22日から都子さん、堤さんの遺体が見つかった富山県魚津市、新潟県上越市を順に訪問。 大町では、松本さんとピアノの中島彩さんが保育園を訪ね、クラシックの名曲など5曲を奏でた。最後は園児が人気アニメの主題歌を自然に歌い出し、大合唱に。大町での演奏会を企画してきた同市の伊東主恵さん(81)は「子どもたちの中に龍彦ちゃんもいるように思えてね」と感慨深げだった。 一家の慰霊碑がある市内の高瀬渓谷緑地公園では、堤さんが好きだったという「タイスの瞑想(めいそう)曲」などを松本さんが演奏する中、市民ら約20人が献花した。 「堤さんが見つかった名立(上越市)を訪ねるといつも涙雨が降る。きのうもそうだった」と松本さん。「(オウム信者による)一連の事件にはまだ分からないことが多い。犯人が心から間違ったことをしたと思ったときが本当の節目になるのではないか」と話していた。(長野県、信濃毎日新聞社)
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