県内の山岳、高原の保全や環境整備などの費用負担の在り方を検討している県の有識者会議「地方税制研究会」は8日、県庁で開いた。遭難防止の取り組み、登山道整備、山小屋トイレの維持管理など―の三つについては登山者(利用者)に費用負担を求めることは可能との見解で一致した。座長の青木宗明神奈川大教授(地方財政)は「利用者に目に見える受益がある」と、負担を求める根拠を説明した。 ただ、最も大きな課題とされるどこで誰から徴収するかなど、方法についての議論には入っていない。研究会はこの日、山岳や高原の現状を把握するため、8月20日に上高地を現地視察することを決定。現地視察も踏まえ、早ければ年内には報告書をまとめたい意向だ。 この日の会合で青木座長は、5、6月に開いた専門部会の見解として、県や県警のヘリコプター出動などが伴う遭難救助にかかった費用を、広く登山者から徴収することはなじまないとの方向性を提示した。委員からは「(県や県警が救助された人に)実費請求すべきだ」との意見が出た他、遭難防止などを目的に集めたお金を充当できないかといった声もあり、まとまっていない。 青木座長は会合後の取材に対し、個人的見解と断った上で、遭難者の救助費用を、広く利用者や県民らから徴収するのは不可能―との見方を示した。県内を訪れる登山者が年間70万人を超す中で、遭難者は同300人弱に限られるという現状を踏まえ、「遭難者がいるから皆さん(救助費用を)払ってくださいという理屈は立たない。住民の生命、安全を守るのは行政の一番の仕事だ」と強調した。 救助費用の実費請求についても、座長は「(一部に)モラルの低い人がいるからといって懲罰的に請求するというのは、冷静に考えると疑問だ」と否定的な考えを示した。(長野県、信濃毎日新聞社)
↧