飯田市千代の野池、芋平(いもだいら)両地区の住民たちが、地元の野池神社の境内にある農村舞台を地域のよりどころとして修復した。江戸時代に建てられたこの舞台には約190年の歴史があり、獅子舞や地芝居を楽しんできたお年寄りたちには、かつての舞台の活気を後世に伝えたい思いがあった。28日には記念の「野池神社夏祭り」が舞台を会場として開かれる。 同神社の氏子でもある両地区の地区長や役員らが修復を計画したのは2011年3月。ことし6月から本格的な作業に着手し、住民も参加して傷んでいた柱の一部や舞台の板を取り換えるなどしてきた。修復費約410万円のうち、約279万円は県の地域発元気づくり支援金を活用。残りは両地区が出し合った。 夏祭りでは、芋平地区の住民による獅子舞や地元の太鼓グループ「千代不動太鼓」の演奏に加え、両地区の計10組合(町内会)がそれぞれ踊りや芝居を披露する予定だ。野池地区長の北沢勉さん(65)は「子どもからお年寄りまで久しぶりに一緒に楽しめる機会にしたい」と話している。 飯田下伊那地方の農村舞台について市歴史研究所がまとめた「飯田・下伊那史料叢書(そうしょ)建造物編2農村舞台」によると、この舞台は1823(文政6)年に建設。住民らによると、1980(昭和55)年ごろまでは地芝居などが上演されていたという。 建築史が専門の同研究所客員研究員の金沢雄記(ゆうき)さん(34)によると、飯伊地方に現存する農村舞台は70棟で、うち8棟が現在も定期的に利用されている。金沢さんは「農村舞台を修復して利用するのは、文化を残す上でも重要な取り組み」と話している。(長野県、信濃毎日新聞社)
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