県農業試験場(須坂市)は、小麦の収穫量を落とす病気にかかりにくい新品種「東山(とうざん)48号」を開発した。うどんなどに使う同じ中力系で、病気に弱い県内主力品種「シラネコムギ」に替わる品種として導入。ことし秋から一般農家に作付けを働き掛け、来年の種まきで全てを更新する計画だ。既に「ゆめきらり」の名称で農林水産省に品種登録を出願しており、生産性の高い品種として普及させる。 シラネコムギは、小麦の根から侵入したウイルスが生育を阻害して収穫量が落ちる「コムギ縞(しま)萎縮病」などに弱い。病気は5年ほど前から県内で広がったといい、農家からは病気に強い新たな品種を求める声が上がっていた。 48号は、こうした病気に強い「アブクマワセ」と「ホクシン」の交配種と、「東山30号(キヌヒメ)」を掛け合わせて開発。病気に強い上、栽培期間の短縮も期待できる。同試験場の2006~12年産の試験栽培データを平均すると、シラネコムギより4日短い。小麦は収穫期が梅雨と重なるため、品質低下を招く雨を避けて少しでも早く収穫できる利点がある。 製粉した場合、小麦粉として使える割合も高く、粒全体の71・2%と、シラネコムギを3・8ポイント上回る。うどんに加工したときの食味はシラネコムギとほぼ同じといい、同試験場の牛山智彦育種部長は「安定して良質な小麦を生産でき、生産者にも製粉会社にもメリットがある」と話す。 県農政部によると、12年産の県産小麦の作付面積は2110ヘクタールで、このうちシラネコムギは約47%の993ヘクタールを占め、品種別で最大。松本市や上田市、安曇野市などで栽培している。ことし秋にはシラネコムギを育てていた農家が計約200ヘクタールに東山48号の種をまく予定だ。(長野県、信濃毎日新聞社)
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