湖や海にちなむ伝説、地名が多い安曇野から大町市への道のりを、手作りした「葦(あし)舟」を引いて歩く催し「葦舟巡礼」が20、21日に開かれる。国内外の芸術家たちが同市の木崎湖畔で創作を繰り広げる「信濃の国 原始感覚美術祭」実行委員会が初めて企画した。太古の安曇野に思いをはせながら大勢で現代の葦舟を引いてほしいと、一般の参加を呼び掛けている。 4年目の同美術祭開幕(8月3日)を飾る催し。葦舟は古事記にも登場する原始的な舟で、美術祭を象徴する造形として昨年と一昨年も作り、木崎湖に浮かべた。今回は美術祭のPRも兼ね、実行委員らが5月のクラフトフェアまつもと(松本市)の会場で、木崎湖畔で刈った葦を縄で束ねて長さ5メートル、重さ約160キロの舟に仕立てた。 中信地方には、九州沿海部が出自という安曇族や、安曇平を造ったなどとされる泉小太郎の伝説があり、海ノ口(大町市)、渚(松本市)など水にちなむ地名も多い。「ゆかりの地を巡りながら、いろいろな人とつながり合える場をつくりたい」と、実行委の池田武司さん(48)=安曇野市=らが舟を引こうと発案した。 20日はお船祭りで知られる安曇族ゆかりの穂高神社(安曇野市)から北安曇郡松川村の安曇野ちひろ美術館まで、21日は同館から大町市堀六日町の麻倉(あさぐら)までの計25キロを、葦舟を台車に乗せ人力で運ぶ。8月3日に市中心街で開く大町やまびこまつりでも引き、同4日に木崎湖に浮かべる。 沿道の歴史を学ぼうと、実行委有志らが17日、郷土史家の荒井今朝一・大町市教育長を訪ね、さまざまな文化が交錯した安曇野の往時の姿を聞いた。実行委の舘友希江(たちゆきえ)さん(36)=安曇野市=は「大町周辺は今も芸術やレジャーで多くの人を引きつける。混沌(こんとん)の中から新しい文化が生まれたら楽しい」と話していた。 20、21日とも午前9時出発。参加自由。問い合わせは実行委(電話0261・22・1436)へ。(長野県、信濃毎日新聞社)
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