飯田市教育委員会は31日、同市座光寺にある奈良・平安時代の役所跡を含む「恒川(ごんが)遺跡群」の国史跡指定に向けて、第1次指定候補区域内の約3・7ヘクタールの意見具申書(申請書)を文部科学相宛てに提出した。信濃国の伊那郡を治めた役所「伊那郡衙(ぐんが)」に関連する遺構が確認されており、市教委は「学術上極めて重要度が高い文化財を包蔵する」としている。 同遺跡群(約34ヘクタール)はJR飯田線元善光寺駅の南側に位置し、東西約800メートル、南北約700メートルの広さ。現在は宅地や農地などとして利用されている。市教委は1977(昭和52)年から調査を続けており、東山道の要衝にあって「中央政権の東国支配の拠点となる郡衙」とみている。 第1次指定候補区域は、税として集めた稲を保管した倉庫が並んだ「正倉院(しょうそういん)」や役人の宿泊施設「館(たち)」、給食施設「厨家(くりや)」の遺構が確認されたエリアと、遺跡群の中央にある湧き水「恒川(ごんがわ)清水」を中心に設定。このうち地権者101人から同意を得られた区域を申請した。 指定が実現すると、地下にある遺構を保存するために開発が制限される。同遺跡群はリニア中央新幹線の県内駅位置案(直径5キロ円)内にあり、市などはJR東海に回避を求めている。この時期の申請について、市教委は「(学術調査の蓄積などを)着々と進めてきた結果、今回の提出になった」とし、リニア計画とは関連がないとしている。(長野県、信濃毎日新聞社)
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