県版レッドデータブックで「絶滅種」とされたラン科の「ムカゴソウ」が、13日までに木曽郡内で見つかった。県内では62年ぶりの発見で、レッドデータブックの改訂作業を進めている県は「6月に茅野市で見つかったコケリンドウに続く発見」と位置付け、改訂後は絶滅の恐れが高い「絶滅危惧種」に評価を変える方針だ。 県植物研究会会員で松本市の会社員上野勝典さん(55)と妻由貴枝さんが見つけた。2人は珍しい植物などの観察を続けており、ムカゴソウの仲間のツレサギソウ属を見ようと今月4日に御岳山麓の草地を探していて、由貴枝さんがムカゴソウに気付いたという。 高さ20~30センチで、他の草に交じって生えていたといい、由貴枝さんは「一目で分かった。うれしくて興奮した」。周辺の狭い範囲でさらに10株ほどを確認した。 連絡を受けた県環境保全研究所(長野市)自然環境部の大塚孝一さんは、「レッドデータブック改訂に向けた明るいニュース」と話している。レッドデータブックで「絶滅種」とされ、その後発見されたのはホソバノシバナ、スギナモ、ジロボウエンゴサクなど5種。ジロボウエンゴサクは、上野さん夫妻が2005年と06年に、県内では73年ぶりに松本市内で発見した。 県植物誌の資料集によると、ムカゴソウは元県植物誌編さん委員長の故奥原弘人さんが御岳山麓一帯で1950(昭和25)年と51年に発見した。上野さん夫妻も、葉の形などムカゴソウと判定するポイントの資料を携え、注意して探索していたという。 ムカゴソウは多年草でやや湿った草地に生育。国内では北海道西南部から沖縄県に分布している。環境省のレッドデータブックでは準絶滅危惧種だが、県内では24年に北佐久郡軽井沢町で見つかった以外は奥原さんの発見記録しかなく、採取もされていないため、02年発行の県版レッドデータブックで絶滅種とされた。(長野県、信濃毎日新聞社)
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