長野市戸隠の戸隠森林植物園で13日までに、特定外来生物で野生化したアライグマ1匹が撮影された。県環境保全研究所(長野市)の岸元良輔・自然環境部長によると、2010年に長野市戸隠と上水内郡信濃町境で車にひかれて死んだアライグマが見つかったが、周辺で生きた姿が確認されたのは初めて。増殖すると生態系に影響したり、文化財を傷つけたりする懸念があり、専門家は駆除する必要があるとしている。 地元の戸隠高原生物多様性保全協議会に加わるNPO法人ラポーザ(同)が同植物園に設置している自動撮影カメラに、7月8日未明に映っていた。カメラの前を横切りながら、カメラを気にするようなしぐさを見せた。飼われていて捨てられたのか、他の地域から移動してきたのかは分からないという。 兵庫県立大特任講師でアライグマに詳しい阿部豪さんによると、アライグマは北米原産でペットとして日本に輸入された。体長40~60センチで、眉間の黒い縦線や尾のしま模様が特徴だ。森林や農地、市街地など生息できる環境は広く、雑食性で繁殖力も強い。 ラポーザで有害鳥獣の調査を担当する春日純也さんは「農作物や小動物を食べるだけでなく、寺社仏閣を引っかいて傷つける被害が全国で増加している」と指摘。奈良県明日香村の寺院や京都市の上賀茂神社の建物などに、傷つけられた跡が確認された。 09年度に長野県農政部が市町村や猟友会などを対象に実施した調査では、県内29市町村からアライグマの生息情報が寄せられた。農業被害はまだ少なく、10年度2万6千円、11年度8万2千円。捕獲される数も年10匹未満という。 県野生鳥獣対策室によると、県内では文化財などへの目立った被害報告はないという。ただ、同森林植物園は戸隠神社に近いため、戸隠観光協会長も務める徳武洋友同協議会長は「対応を検討していきたい」と話している。 阿部さんは「目撃情報があれば、アライグマは増加傾向にある。速やかに除去する必要がある」と指摘。岸元部長は「数が増える前に根絶が必要だが、生息密度が低いと捕獲の効率が悪く、在来種がわなにかかる可能性もある」と話し、駆除の課題は多いとしている。(長野県、信濃毎日新聞社)
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