学校法人「才教学園」(松本市)が経営する小中学校で教員免許のない職員に授業をさせるなどしていた問題で、松本署などが21日、教育職員免許法違反の疑いで同学園の強制捜査に踏み切った。背景には、同学園が県の調査に対し、最初は県側が指摘した2件の違反についてのみ認め、2日後に多数の違反を報告するなど、対応の不自然さがあった。学園側が故意に行ったのか、県側の調査だけでは疑問点が解明されていない。捜査には、県警生活環境課のほか捜査2課も加わり、押収した資料などを基に実態解明を急ぐ。【1面参照】 県情報公開・私学課が調査に踏み切る端緒となったのは、7月26日に信濃毎日新聞が県に対して行った才教学園の「学校現況調査」の報告の情報公開請求だった。これは、年度ごとに所属する教員名、所有する免許の種類、担当科目などを報告する内容だが、個人情報が含まれており、黒塗りでの開示となった。 同課はこれを受け、個人情報を含めて本年度分の報告内容をあらためて精査。(1)高校の「公民」「情報」の免許を持つ教員が中学校で社会を教えている(2)中学校の「技術」の免許を持つ教員がいない―という違反とみられる二つの不自然な点を見つけた。 同課は情報公開請求3日後の29日、同学園に現況調査の不自然な点について報告を要請。さらに2日後の31日、県庁を訪れた同学園の松山治邦教頭(理事、事務長)と職員1人は、2件について認めたものの、それ以外の違反については一切触れなかったという。県情報公開・私学課の久保田俊一課長は「この時点では、調査に事実と異なる記載が多数あるとは思ってもいなかった」と話す。 しかし、わずか2日後の8月2日、職員1人が県庁を訪れ、報告内容には事実と異なる記載があり、中学校の免許しか持たない教員が小学校で担任を持つなど同法違反が多数ある―と伝えた。その後、同課は同学園に順次報告を求め、二度にわたり現地調査も行った。教員の時間割表と同調査を比較するなどして延べ64人の同法違反を確認した。 2005年の小中学校開校以来、現況調査に事実と異なる記載を繰り返したが、県は同法違反を見抜けなかった。久保田課長は「これまで報告は受けても内容の精査はしていなかった。信頼関係の上でやってきた」と説明する。 松山教頭は取材に、組織的や意図的な関与を否定している。久保田課長は「なぜ、違反が起きたのか、この疑問が解決しない限りは不信感を拭えない」とする。 県警は20日、才教学園などの記者会見と前後して、学園関係者の任意聴取を始めるなど慌ただしく動いた。その結果、関係資料を押収して分析する緊急性が高いと判断し、21日、家宅捜索に踏み切った。(長野県、信濃毎日新聞社)
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