環境省は22日までに、南アルプスのニホンジカ対策として仙丈ケ岳(3033メートル)の小仙丈沢カールで9月1~4日に銃による駆除を試行することを決めた。駆除したシカの一部を現地に埋めて処理する実験も予定していたが、生態系に配慮して今回は取りやめる。安全確保のため、付近の登山道に登山者がいる間は駆除を休止する。 同省南ア自然保護官事務所(山梨県南アルプス市)は、少なくとも駆除した1頭を現地埋設し、キツネや熊などをどの程度おびき寄せるか調べる考えだった。ただ、南アは世界的にみて絶滅危惧種ライチョウの生息域の南限とされ、キツネによる捕食などで生息数が減っているため、専門家から現地埋設は慎重に進めるよう求める声が出ていた。 同事務所の中村仁自然保護官は「まず高山帯でシカを駆除できるかどうかを確かめ、次の段階として処理方法を検討したい」としている。 一方、駆除作業中は稜線(りょうせん)付近の3カ所と、沢登りでカールへ向かう人の入り口となる山腹の林道付近の2カ所に監視員を置く。夜間は銃が使えないため、登山道を通行止めにするより作業時間は短くなるが、中村自然保護官は「自然に親しんでもらうという国立公園の目的を優先したい」と話した。 同事務所はシカの逃げ道をふさぐため、7月に延長500メートルの柵をカール底部に設置。撃ちやすい場所へシカをおびき寄せるため、粒状のえさを自動でまく装置や塩も置いた。いずれも駆除作業までに環境の変化に慣れさせる狙いで、今のところシカが一帯を避ける様子はないという。(長野県、信濃毎日新聞社)
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