良質な麻の産地として知られた大町市美麻の美麻小中学校で23日、麻を煮て皮をむき、繊維を取る体験授業が初めて開かれた。かつて栽培に携わった住民らの指導を受けながら小中学生約80人が体験。地名に名を残しながらも半世紀前にほぼ途絶えた地域の伝統を共に楽しんだ。 古くから麻栽培が盛んだった美麻だが、戦後の取り締まりや化学繊維の普及で一気に衰退。幻覚作用の低い品種を栽培する特区構想が浮上したこともあったが、既に栽培農家はなく、この日も栃木県産の麻を仕入れた。 子どもの郷土学習を応援しようと、住民らでつくる「美麻地域づくり会議」が声を掛け、栽培・加工経験のあるお年寄り4人を招待。長さ約2メートルの乾燥した麻を1時間半ほど釜で煮る「麻煮(おに)」に始まり、軟らかくなった麻の皮を剥ぐ「麻(お)はぎ」、その皮の硬い表皮や汚れを専用の包丁でこそぎ落とす「麻(お)かき」までを、子どもたちは見よう見まねで習った。 「簡単そうでもやってみると難しい」。中学2年の大塚歩夢(あゆむ)君(14)は、麻かきを美しく仕上げる古老たちの手並みに脱帽。祖父も麻栽培をしていたといい、「美麻の名前に誇りを感じます」と話していた。デイサービス先から参加した羽田忠夫さん(97)は、ほぼ半世紀ぶりの作業に「麻が主産業だった美麻の文化をこうして伝えてくれるのはいいことだ」と、うれしそうに子どもたちの様子を見守っていた。 出来上がった麻の繊維は業者が加工し、みあさ保育園の園児らが10月、自分たちの卒園証書用に作る和紙にすき込むという。(長野県、信濃毎日新聞社)
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