松本市で開かれている22回目のサイトウ・キネン・フェスティバル(SKF)松本で、病気療養のためにこの春まで1年間、指揮活動を休止していた小澤征爾総監督(77)が元気な姿を披露し、その回復ぶりを見たファンや関係者に安堵(あんど)感が広がっている。指揮する予定の5公演のうち、3公演を28日までに無事終了。自身と周囲の万全な健康管理が功を奏しているようだ。 28日夜、まつもと市民芸術館。小澤さんは今回3公演目のラベルのオペラ「こどもと魔法」を指揮。1992年の初回からたびたび鑑賞しているという松本市の女性(70)は「音がすっと心に染みていく感じがして衝撃を受けた。元気になってくれてうれしい」と喜んだ。 小澤さんは今月5日の取材に、体調について「全然大丈夫」と語り、公演ごとに調子と自信を取り戻している様子。SKF松本ボランティア協会の斉藤淳一実行委員長は「本来のフェスに戻った感じ。今後もサポートしたいという強い思いだ」と話す。 小澤さんは10年1月に初期の食道がんが判明、11年1月には腰部ヘルニアの手術を受けた。11年のSKFはオペラ全4公演のうち2公演の指揮を降板し、昨年は指揮する場面が一度もなかった。 SKF松本実行委事務局などによると、小澤さんは今回、8月4日に松本入りし、閉幕(9月7日)まで市内に借りた家に滞在。本番前の稽古は1日数時間に限って集中し、借りた家で勉強を重ねている。家族らが練習時間や食事、運動に気遣い、主治医も訪れる態勢で臨んでいる。 今回は小、中学生らの吹奏楽団による演奏会にサプライズで登場するなど、総監督としても精力的に動いている。運営スタッフに活を入れたり、外食や犬の散歩を楽しんだりと、元気な姿を周囲に印象付けている。 小澤さんが指揮する公演は31日のオペラと、ジャズピアニスト大西順子さんのトリオと共演する9月6日の「松本Gig」が残るが、チケットは完売している。 サイトウ・キネン・オーケストラのバイオリニスト福原真幸(まゆき)さん(60)は「恩師の斎藤秀雄先生から受け継いだ音楽家の精神を後輩に伝え続けてほしい。私たちもサポートしたい」。23日のパーティーで小澤さんは「市、県、ボランティア、財団の方たちに助けてもらわなければ開催できない。本当に感謝している」と話した。(長野県、信濃毎日新聞社)
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