県内の今夏の商戦は、猛暑の影響でエアコンの売れ行きが大きく伸び、高値で推移した野菜の売り上げが増加した店も目立った。観光地も高原などを中心に、涼を求める人でにぎわった。百貨店では一部に景気回復を感じさせる動きも見えつつあるが、来春に消費税率引き上げが予定されていることもあり、今秋以降の個人消費の動向には慎重な見通しが目立っている。 エディオン飯田インター店(飯田市)は8月1~28日のエアコンの売り上げが前年同期の1・5倍。桑原孝一店長は「(最高気温35度以上の)猛暑日が続き、設置する予定がなかった部屋用に購入する人が多かった」。ケーズデンキ長野本店(長野市)では、熱中症予防を意識して早めに買い求める人が多く、6~8月のエアコンの売り上げが前年同期の3割増だった。 野菜は、春以降の天候不順や少雨傾向で高値が続いたため、綿半スーパーセンター長池店(長野市)では、8月の野菜の売り上げが前年同月比38%増。ツルヤ(小諸市)でも、7~8月の野菜の売り上げは十数%伸びた。同社の臼田進常務は「少雨のため家庭菜園で収穫できず、店頭で買い求めた人も目立ったようだ」とする。 観光も猛暑の追い風を受けた。信州いいやま観光局(飯山市)が販売する夏の長期滞在プラン「涼(りょう)・山(ざん)・泊(ぱく)」は、8月末までの利用者が54人と前年の4・2倍に増加。昨年まで5泊以上としていた条件を、今夏から3泊以上にした効果もあったという。 また、中央アルプス観光(駒ケ根市)ではロープウエーの7、8月の利用客数がともに前年同月を上回り、8月は7万95人が乗車。8月では3年ぶりに7万人を超えた。松本市上高地でも、お盆期間(8月10日~18日)の利用者数が前年同期を18%上回った。 安倍政権の経済政策「アベノミクス」の効果がどこまで波及するかが焦点となる中、百貨店には売り上げ回復の兆しも出ている。井上(松本市)は、6~8月の全館の売り上げが前年同期を上回った。中元は前年並みだったものの衣料品が好調で、各月とも宝石や貴金属、高級呉服などの売り上げが前年同月を上回った。上嶋保本店長は「株価上昇などムードの良さが影響しているのではないか」と話す。ながの東急百貨店(長野市)は、中元の売り上げが前年を0・2%上回った。 各事業者が、駆け込み需要なども含めて今後の個人消費に影響を及ぼすとみているのが、来春に予定される消費税率引き上げだ。エディオン飯田インター店は家庭用の太陽光発電システムの販売を強化する計画。井上の上嶋本店長は「先行きは不透明」と話しており、ツルヤの臼田常務も「高額商品の駆け込み需要が起これば、食費に支出が回らない」と心配している。(長野県、信濃毎日新聞社)
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