埼玉、千葉両県では2日、竜巻が発生して大きな被害が出た。長野地方気象台によると、県内では2006年以降竜巻の発生は確認されていないが、松本など春に強風が吹きやすい地域もあるほか、秋でも暖かく湿った空気などによって大気の状態が不安定になれば、どこでも発生の可能性があるため、注意が必要としている。 竜巻は上空に寒気が、下層に暖かく湿った空気が入って大気の状態が不安定になり、暖かい空気が上昇気流となって積乱雲をつくることなどに伴って発生する。県内では、記録が残る1961(昭和36)年以降でみると、71年7月に飯田市、2000年7月に佐久市、05年6月に長野市で確認された。しかし、同気象台は「竜巻は平地の方ができやすいという面はあるにせよ、県内でも条件がそろえば発生の可能性がある」とする。 05年の長野市の竜巻で、同市小島田の笠原隆子さん(69)宅ではトタン屋根がすべて吹き飛んだ。正午すぎにもかかわらず外が真っ暗になり、雨がぱらついてきたので窓を閉め始めたら強風が吹き始めたという。雨戸を閉めようと外を見ると農業の肥料袋や枝などが空を舞っていたといい、「危なくて外に出られなかった。一瞬の出来事で怖かった」と振り返る。 気象庁は5年前から「竜巻注意情報」を出している。長野地方気象台は今年、9月1日までに県内に関して33回の注意情報を発表したが竜巻は確認されておらず、情報をどう住民に伝えるかをめぐっては自治体間で対応が分かれる。 伊那市は同気象台が竜巻注意情報を出す度に、災害情報を希望する住民にメールで伝えている。「メールを受信すれば、自分で空模様を見たり、風の様子を確認したりと注意喚起につながる」とする。一方、岡谷、上田市は希望者への災害情報のメール配信はしているものの、竜巻注意情報は対象外だ。「実際に竜巻が起こるのはまれ。注意情報が出る度にメールを配信すれば、混乱を来しそう」(岡谷)とする。 長野地方気象台によると、県内では竜巻だけでなく、春先には偏西風によって日本海上空を西から東へ移動する低気圧が影響し、南から強い風が吹き、木曽谷と伊那谷を通る風が合流する松本市周辺で極めて風が強くなりやすい。 松本市危機管理課によると、同市内は例年3月下旬から4月上旬に強風に見舞われ、農業用ビニールハウスが飛ばされるなどの被害が出る。同市梓川梓の農業宮坂和子さん(82)は、12年3月にあった強風で、近くの空き家のトタン屋根や板材が飛ばされるのを目の当たりにした。「ゴー、ゴー」という風の音を聞いたといい、「生まれて初めての経験で、自分も飛ばされそうになった」と話す。 安曇野市では今年3月13日と18日に強風があり、運送会社の元事務所の屋根が半分めくれあがったり、農地に置かれた農機具小屋が転がったりする被害が出た。市危機管理室は「風の通り道の予測は難しい」とし、特別な対策はしていない。被害のあった建物は古かったり、地面に固定されていなかったりしたため、「強風の注意報などがあれば、飛びそうなものを固定するなど自己管理を徹底してもらう」としている。(長野県、信濃毎日新聞社)
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