2020年の東京五輪開催決定に、県内の自治体の首長らは、地方への経済波及効果に期待する一方、東京一極集中、地方軽視が進むのではないかと懸念した。地方へも効果を波及させるため、国にも地方にも工夫が必要だとの声も上がる。 「東京を中心とした投資活動の波及効果だけでなく、海外に長野県の観光や健康(長寿)、スポーツ(施設)を発信する上でプラスだ」。阿部守一知事は9日、東京開催をこう受け止め、都などから要請があれば全面的に協力する意向を示した。 一方、市町村には不安が広がる。下伊那郡阿智村の岡庭一雄村長は「東京がさらに巨大化するのに地方は縮小傾向。政府は地方よりも東京に目が向くのではないか」。飯田下伊那地方は27年にリニア中央新幹線の県内駅が開業する予定だが、「(国にも地方にも)観光拠点などを整備するような力が残っているかどうか」と漏らす。地域高規格道路「松本糸魚川連絡道路」の早期建設などを訴える大北地方の市町村からも「五輪を錦の御旗に公共投資がさらに東京一極集中にならないか」(西沢義文・大町市建設水道部長)との声が聞かれた。 茅野市の柳平千代一市長も「東京一極集中が一層進む懸念がある」と指摘。「地方は上昇気流をキャッチする方法を考えなければいけない」とした。全国町村会長を務める藤原忠彦・南佐久郡川上村長は「(五輪がもたらす)利益の地方配分をしっかりとやり、全体に効果を波及させなければいけない」と国側に求める。1998年長野冬季五輪でスキージャンプなどの会場となった北安曇郡白馬村の窪田徳右衛門副村長は「地方の経済効果や五輪ムードを高める検討が必要」と強調。練習場、宿泊先の提供といった面で海外チームを誘致し、地域活性化や住民の国際交流を深めることが大事だとした。 福祉や労働、消費者団体の代表らの受け止めも、期待と不安が交錯した。県社会福祉士会の三村仁志会長はパラリンピック開催で障害者への理解や建物のバリアフリー化が進むことに期待感を示しつつ、「国家予算がインフラ整備に向き、福祉がおろそかになっては困る」。連合長野の中山千弘会長は「雇用創出を含め、地方に経済効果を波及させるには一工夫必要」とした。県消費者団体連絡協議会の鵜飼照喜会長は「日の当たるのは東京など一部で地方の消費生活が良くなるとは思えない」と語った。(長野県、信濃毎日新聞社)
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