消費税率が来年4月に予定通り8%に引き上げられる見通しになったことに対し、県内企業のトップなどからは12日、「財政再建のためにやむを得ない」との受け止めが出る一方、景気の腰折れを懸念する声も上がった。 「歓迎ではないが、国の財源問題などを考えれば仕方ない」と話すのは松本日産自動車(松本市)の長沢一臣社長。既に駆け込み需要とみられる自動車購入もあり、来春までの販売増やその後の反動減も予想され「増税後は点検や保険といった販売以外の競争も激化するだろう」とみる。 自動車などの充電器製造を手掛けるアルプス計器(長野市)の黒岩孝喜社長も「増税はやむを得ない」と話し、「企業向け減税以上に必要なのは、国民全体の購買意欲を落とさせないための政策」と注文する。 経済指標には明るさが出始めたが、地方経済に回復の実感は乏しい。県内の主要企業を対象に信濃毎日新聞が実施した経済アンケート(6月上旬~7月上旬に実施)では、消費税率引き上げを予定通り「実施すべきだ」(「どちらかといえば」を含む)とした企業が46%、「実施すべきではない」(同)が41%で賛否が割れた。 コープながの(長野市)の上田均理事長は「一部で言われる『アベノミクス効果』は県民の暮らしに及んでいない。その中で引き上げれば事業にも大きく影響する」と話す。バインダー製造などを手掛けるミスズ・ファクト(佐久市)の鈴木勝夫社長も「個人消費に水を差す可能性もある」と心配する。 来年4月に増税される場合、今月中に契約すれば現行の消費税5%で住宅が建てられるとPRする建設業界。ヤマウラ(駒ケ根市)の北村光正管理本部副本部長は、駆け込み需要にも確かな手応えはなく「(新築を検討する)消費者にとってはマイナスのインパクトになる。あと半年余でどこまで景気回復するか」と気をもむ。 原材料の値上がりの影響を受けている業界にとっては、増税分を価格転嫁できるかどうかという悩みも加わる。高野豆腐製造販売の登喜和(ときわ)冷凍食品(伊那市)の登内英雄社長は「増税による仕入れ原料の上昇分を販売価格に転嫁できるか不安。業界で足並みをそろえて対応したい」とする。原料の輸入大豆は円安傾向で高騰。増税でさらに負担が膨らむ可能性があり、「食品関係など円安で苦しむ業界への対策を明確に示してほしい」と要望する。 半生菓子製造販売を手掛ける天恵製菓(下伊那郡豊丘村)の片桐義宣社長も「販売価格に転嫁できなければ、内容量を減らして実質的に値上げすることもあり得る」。燃料や電気代の上昇が経営を圧迫しており「中小企業の競争力を高める政策を」と求めた。(長野県、信濃毎日新聞社)
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