2020年夏季五輪が東京で開かれることに決まり、県内で各国代表のキャンプ誘致を模索する動きが出始めた。夏も比較的涼しく、山間部の高低差を生かしたトレーニングが可能で調整の適地ともいわれる県内。首長や観光関係者らには、誘致できれば地域のスポーツ振興や経済波及効果につながるとの期待がある。ただ、施設の乏しさや警備上の課題などから、検討をためらう市町村もある。 19年に日本で開かれるラグビーワールドカップ(W杯)出場国のキャンプ誘致を目指す上田市菅平高原観光協会。丸山進理事長は、五輪前のキャンプ誘致も「当然ターゲット」と話す。16年リオデジャネイロ夏季五輪で初採用される7人制ラグビーが東京五輪でも行われる予定で、「注目度の向上は追い風。施設拡充に向けた協議を市などと進め、誘致したい」とする。 昨年、12歳以下の女子サッカー大会を始めた南佐久郡川上村は来年度、村営グラウンドに芝生を張る予定で、藤原忠彦村長は「村民にサッカーに親しんでもらい、キャンプ誘致の機運につなげたい」と力を込める。ほかにも「五輪のプレ大会誘致も考えられる」(柳田清二佐久市長)、「長野市も(誘致に)乗り遅れてはいけない」(鷲沢正一長野市長)といった声がある。 長野陸上競技協会の玉城良二・普及強化委員長は、東京に近い利便性、長野冬季五輪開催地としての知名度も「誘致しやすい条件」とみる。県サッカー協会の中和昌成専務理事も「県内は夏季の台風直撃が比較的少なく冷涼。キャンプ誘致は地元サッカーの活性化にもつながる」と期待を示している。 日本オリンピック委員会や東京都によると、12年ロンドン五輪には204カ国・地域の1万500人が参加。東京五輪も同数の参加想定で準備するよう求められている。ただ、各国のキャンプ地などはチームや選手らが独自に決めるため、誘致は各自治体などの戦略や工夫が鍵になる。 飯田市の自転車チーム「ボンシャンス飯田」の元マネジャー熊谷秀男さん(63)は、同チームのアドバイザーでフランスの自転車チームに所属している新城幸也選手を通じ、欧州の自転車代表チームに働き掛ける考えだ。「飯田下伊那の起伏ある地形は自転車チームには魅力。有力なPR材料になる」 02年サッカーW杯日韓大会でパラグアイ代表がキャンプを張った松本市は、松本商工会議所を核とする協議会が南米各国を訪ね、サッカー協会関係者らにパンフレットも配って誘致に成功した。当時市職員でキャンプ実行委員会事務局長を務めた高橋慈夫・松本体育協会副会長は「過去の経験を生かした取り組みを近く協会で考えたい」と話す。 一方、長野陸協の玉城委員長は「県内は競技施設が近隣県に比べ劣っている」とも指摘。中信地方の首長は「キャンプ誘致には関心がある」とするが、競技施設が不十分で「難しい部分もある」と漏らす。スポーツ合宿誘致に力を入れる南信の市の担当者も関心を寄せるが、「五輪選手ともなれば宿泊施設などは厳重な警備が要る。現状では対応しきれない」と打ち明けた。 全国でもキャンプ誘致の動きが浮上しており、北海道は東京五輪決定前に市町村対象に誘致の意向調査を開始。佐賀県、栃木県、福岡市、千葉市などの首長も誘致に意欲的な発言をしている。(長野県、信濃毎日新聞社)
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