自殺予防を目的とする「長野いのちの電話」に2012年に寄せられた相談のうち、内容別の集計で、自殺をほのめかす「自殺志向」が前年比226件増の836件に上り、1994年の長野いのちの電話開設以来、最多だった10年(914件)に次いで多かったことが23日、分かった。運営する社会福祉法人「長野いのちの電話」の西沢聖長(まさたけ)事務局長(67)は、「リストラや病気、家族との不和などが複合した悩みを抱える人が多く、深刻化している」と説明している。 同法人によると、12年の相談で、発言内容から相談員が自殺志向と判断したのは男性が306件、女性が530件だった。相談全体(6339件)に占める自殺志向の相談の割合は13・2%で、開設以来最も高かった10年の11・8%を上回った=グラフ。 自殺志向の相談内容は、「自分は生きていても価値がない」などと話す「人生」が315件、うつ病や統合失調症などの心の病に悩む「精神」が278件。ほかは「家族」「職業」など。 自殺志向の相談は、年度集計だった94~09年度はほぼ右肩上がりに増加。年集計となった10年に900件を超え、11年にいったん減ったものの12年は800件台となった。日本いのちの電話連盟事務局(東京)によると、長野県を含む全国51カ所の相談窓口の12年の自殺志向の相談は7万9666件で、10年前より4万2千件余り増加した。 06年の自殺対策基本法施行後、行政などが自殺防止策を打ちだし、12年の自殺者は15年ぶりに全国で3万人を切った。 しかし、長野いのちの電話の運営、相談業務などに関わっている県精神保健福祉センター(長野市)の小泉典章所長は「人間関係が希薄化し、就職難や失恋など本人にとっては死を考えるほど真剣な悩みを、隠さず話そうと思える場が減っている。匿名のいのちの電話は、そうした人たちにとって、より一層必要とされる場になっている」と話している。 一方、長野いのちの電話の相談員は、最も多かった07年度の154人から12年度は103人に減った。相談態勢は常時2人が理想だが、1人で対応せざるを得ない時間帯が増え、相談件数全体も減少傾向にある。西沢事務局長は「相談員確保が最大の課題」とし、なり手を募集している。 長野いのちの電話は年中無休で、午前11時~午後10時に長野(電話026・223・4343)と松本(電話0263・29・1414)で相談に応じている。相談員の希望や問い合わせは事務局(電話026・225・1000)へ。(長野県、信濃毎日新聞社)
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