全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の学校別成績の公表判断について、文部科学省が検討している市町村教育委員会ではなく、従来通り各学校に委ねるべきだとする県内の市町村長が54・5%、市町村教委が71・4%に上ることが19日、信濃毎日新聞の取材で分かった。市町村教委による学校別成績の公表は、学校の序列化につながりかねないなどと懸念する声が根強い。市町村教委が公表できるようにするのが望ましいとする回答は市町村長の37・7%、市町村教委の22・1%にとどまった。 文科省は現在、市町村教委による学校別成績の公表を禁じている。情報公開や説明責任の観点で来年度から各教委に判断を任せる方向で検討しており、意向把握のため7月に全国の自治体の首長、教委などを対象に同様の調査を実施。市町村教委による公表判断を支持する都道府県の知事は44・4%、教委は40・4%に上った。市町村長らの回答の都道府県別内訳は公表しておらず、本紙が県内全77市町村長、教委に取材した。 県内で従来通り学校の判断に委ねるべきとしたのは、42市町村長と55教委=グラフ。割合はそれぞれ文科省の全国調査を7・3ポイント、7・9ポイント下回った。菅谷昭松本市長ら多くの市町村長が「学校や地域の序列化につながる」と指摘。「小規模校は個人が特定される恐れがある」(飯田市教委)との声もあった。 市町村教委が公表できるようにするのが望ましいとしたのは29市町村長と17教委。割合はそれぞれ全国を4・0ポイント、5・1ポイント上回った。理由は「市全体の教育振興のためにも一元的な情報公開が必要」(牛越徹大町市長)、「設置する学校の状況や教育施策について、社会に説明する責任がある」(東筑摩郡山形村教委)などが挙がった。 教委による公表判断に賛成の市町村長、教委にも、実際に公表することには慎重な意見が目立った。茂木祐司北佐久郡御代田町長は「公表の責任は学校ではなく教委が負うべきだ」とした上で、「結果を公表する必要はない。全国と比べるのでなく、子どもへの指導に生かされるべきだ」と強調した。 「公表自体必要ない」とする柳田清二佐久市長ら6市町村長、5教委は「その他」と回答した。17市町村で首長と教委の意見が分かれた。 県教委教学指導課によると、学校別の結果は本年度、県内小中学校のそれぞれ8割ほどが公表。ほとんどが全国平均や県平均より「高い」「低い」など、数値でなく言葉で説明している。 文科省の調査で、県教委は「市町村教委は学校設置者として公表を判断する責任がある」として、教委に公表を委ねることに賛成と回答。阿部知事は「その他」と答えた上で、結果公表について多くの保護者が関心を持っているとして「市町村教委の全国一律での原則公表」を求めた。(長野県、信濃毎日新聞社)
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