信大病院(松本市)が、自由診療と保険診療を併用できる「先進医療」として患者の免疫細胞を培養、加工してがん細胞を攻撃させる「樹状細胞ワクチン療法」を実施できる医療機関に承認されたことが2日、分かった。国内6施設目で県内では初。膵臓(すいぞう)がん、乳がん、肺がん、胃がん、大腸がんを対象とする。 自由診療の同療法は保険診療の併用が禁止されており、従来は付随する検査や薬剤の費用も全て自費になったり、信大病院で他の治療を受けていると受けられなかったりした。今後医療費の一部が医療保険で賄われるなど患者の負担軽減につながる。 樹状細胞は、がん細胞を食べて特徴を認識し、それを別の免疫細胞に覚えさせて、がん細胞を攻撃させる“免疫細胞の司令塔”。同療法は、患者の血液から採取して増やした樹状細胞に患者のがん組織をすりつぶして取り込ませるなどした後、体内に戻す。1回の治療で7度接種し、約4カ月かかる。 信大病院は2008年から同療法に取り組み、ことし9月末までに175人の患者に245回行った。このうち、膵臓がん(31例)、結腸・直腸がん(22例)、肺がん(20例)、乳がん(16例)、胃がん(14例)では、約3割で生存期間が延びるなどの効果を確認。こうした実績が国に認められた。10月下旬から患者を受け入れている。 先進医療として同療法を受けると1回129万円。抗がん剤・放射線療法を継続する、自力歩行できるなど全身状態が良好であることなどの条件がある。先端細胞治療センターの下平滋隆センター長は「取り組みが認められた。今後はどんな病態の患者で効果が高いのか明らかにしたい」と話している。 県内では、松本歯科大病院(塩尻市)も2010年から自由診療で同療法を実施している。(長野県、信濃毎日新聞社)
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