安曇野市の市有宿泊施設「長峰山森林体験交流センター天平の森」は25日までに、松くい虫の被害に遭ったアカマツを特殊な加工をせずに燃料として使えるボイラーを導入した。被害木を有効活用する市のモデル事業で、風呂や床暖房の熱源にする。市によると、松くい虫の被害木をチップやペレットに加工せずに活用する例は珍しく、省力化やコスト削減が期待できるという。 新潟市のメーカーが作ったボイラーで、高さ1・8メートル、幅0・9メートル、長さ2メートル。直径20センチ、長さ1・1メートルまでの被害木を丸太のまま投入できる。約1100度の高温になる2次燃焼室があり、木材をほぼ燃やし尽くせる。 アカマツはやにが出るため燃料には適さないが、松くい虫の被害に遭うとやにや水分が減る。昨年度に市がテストし、ボイラー本体や安定燃焼に悪影響がないことを確認したという。ボイラーは、天平の森敷地内に木造平屋約20平方メートルの小屋を建てて設置。事業費は2370万円余りで、国から補助金1100万円を受けた。 昨年度の安曇野市の松くい虫被害木は約4700立方メートルで、前年度より8%増えた。被害は明科地域で目立ち、これまでは伐採してシートで覆って薬品で薫蒸するか、チップにして林にまいていた。天平の森は、灯油を燃料とするボイラーを補う熱源として使いながらデータを取り、効果的な運用方法を探る。 宮沢宗弘市長は25日の記者会見で「ボイラーの燃料として活用できる量は被害木全体からすればわずか。ほかの施設にも導入できるか検証したい」と話した。(長野県、信濃毎日新聞社)
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