今年春の凍霜害で特産の柿に壊滅的な被害を受けた飯田市立石地区の住民たちが30日、災害に負けずに頑張ろうと、地区のシンボルでもある県天然記念物の杉「雌杉(めすぎ)」に飾るしめ縄用の稲わらの用意をした。凍霜害に加え、9月に台風18号の被害でも住民たちは苦しめられた。それでも来季の実りへの期待を込めて、7日には高さ約40メートル、幹回り約8メートルの雌杉にしめ縄を飾って地区の再生を祈る。 30日は、住民グループ「南無衆(なむしゅう)」の7人がメンバーの所有地に集まった。雌杉を所有する宮嶋英紀さん(70)が稲わら約50キロを用意。メンバーたちはかまを使って稲わらの長さをそろえていった。 約7アールの畑で柿を栽培している村松洋治さん(66)によると、今年収穫できたのはわずか20個ほど。栽培歴は40年を超えるが、収穫量がこれほど減ったのは初めて。10月下旬の収穫期を迎えても実のない畑を目にして、気持ちが沈む時もあったという。村松さんは「地区のシンボルの雌杉にしめ縄を飾ることで、柿農家の気持ちが前向きに明るくなってほしい」と話す。 やはり柿を栽培している伊東克彦さん(70)は「霜を受けて葉が出なかった5月の畑の景色は異様だった」と振り返る。収穫量は1割に満たず、今季の出荷を見送った。しめ縄を飾ることで「来年は新しい気持ちで栽培に臨みたい」と語った。 メンバーたちは7日午前9時に雌杉に集まり、長さ12メートルのしめ縄を作り、高さ約3メートルの位置に飾り付ける。宮嶋さんは「互いに励まし合って、柿の収穫が元に戻ることを祈願したい」と話している。(長野県、信濃毎日新聞社)
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