遠山郷と呼ばれる飯田市南信濃、上村地区に伝わる「遠山の霜月祭り」(国重要無形民俗文化財)が1日、南信濃中立の正一位稲荷(いなり)神社と、南信濃小道木(こどうぎ)の熊野神社を皮切りに始まった。社殿中央に据えられた釜の周りで氏子たちが踊り続け、谷深い遠山郷に活気をもたらした。 正一位稲荷神社では正午ごろから、八百万(やおよろず)の神々に湯を献じる「湯立て」が始まった。午後9時すぎ、大天狗(てんぐ)の面(おもて)を着けた神職「禰宜(ねぎ)」が現れ、釜の熱湯を素手ではじく「湯切り」を行うと、社殿内は熱気と興奮に包まれた。 新潟市から写真仲間6人で訪れた会社員椛沢(かばさわ)敬子さん(65)は「地域で伝統を受け継ぐ姿がすごくいい。祭りからは温かみが伝わり、ずっと続いてほしい」と話していた。 祭りは太陽の力が衰える旧暦(11月)に神々を社殿に招き、「湯立て神楽」を奉納して生命の再生を祈る。今月15日まで、遠山郷の計9神社で祭事が繰り広げられる。(長野県、信濃毎日新聞社)
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