JR東海は5日、山梨県の山梨リニア実験線で、リニア車両に搭載されている超電導磁石から発生する磁界の測定作業を報道陣やリニア中央新幹線計画の沿線7都県の環境担当者らに公開した。国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)のガイドラインが健康に影響を与える可能性があるとしている規定値と比べ、車両の停止時は約2千分の1、通過時は約4分の1の値を軌道脇で計測。JR東海が準備書に記載した値とほぼ同じだった。 9月に公開した環境影響評価(アセスメント)準備書について、磁界の影響を懸念する意見が多数寄せられたのを受けて実施。山梨県都留市の山梨リニア実験センターの保守基地や、実験線沿線の高架下、トンネルの上部、車内など6地点で測定した。 保守基地の測定では、車両停車時に超電導磁石から水平に6メートル離れた地点で0・18ミリテスラ(テスラは磁界の大きさを表す単位)だった数値が、9メートル離れた地点では0・061ミリテスラと約3分の1に減少。JRは距離を置くと数値が大きく下がると説明した。 リニア車内では、超電導磁石を設置している車両の連結部分の通路、超電導磁石に近い客室前方、さらに磁石から距離が離れた場所の計3カ所で、床から30センチ、1メートル、1・5メートルの高さで測定。停車時と、時速500キロの浮上走行時とも準備書などで記載した数値とほぼ同じだった。座席では医療用ペースメーカーが走行時でも正常に動く様子を確認。同社は「国の承認基準を守って施設や車両の設計を行っている」と説明した。 同社の内田吉彦・環境保全統括部長は、磁界の数値について「あらゆる機会で説明している内容の正しさを確認してもらえた」と述べ、環境への影響は小さい―などとしている準備書の妥当性をあらためて主張した。 愛知県環境影響評価審査会メンバーで磁界に詳しい藤原修・名古屋工業大名誉教授は視察後、「国際ガイドラインは電子回路に与える影響に言及しておらず、ペースメーカーの装着者などに配慮した適切な対応が必要」と述べた。準備書を審議している長野県環境影響評価技術委員会が専門委員に委嘱した慶応大医学部の武林亨教授(公衆衛生学)も視察。「実際の測定を見ることができたのは、県による評価の第一歩だ」と述べた。(長野県、信濃毎日新聞社)
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