巻き貝のような殻を持つ海洋の動物プランクトン「有孔虫(ゆうこうちゅう)」は、海水温が高いと右巻き、低いと左巻きになると考えられてきたが、実際は巻き方向と水温とは無関係だったとの研究結果を信州大理学部(松本市)の氏家由利香研究員と浅見崇比呂(たかひろ)教授がまとめた。有孔虫の化石の巻き方向は、過去の海水温を推定する手掛かりとして使われてきたが、見直しも迫られそうだ。 英専門誌「ジャーナル・オブ・ゾオロジー」の電子版に発表した。 有孔虫は直径1ミリ以下の単細胞生物。巻き貝のような炭酸カルシウムの殻を持ち、その形から約50種に分かれると考えられている。5億年ほど前に出現し、世界の海に分布するため、地層に蓄積されている殻の化石から、地層の年代や過去の海水温を推定する指標として使われてきた。 氏家研究員らは、有孔虫の1種であるグロボロタリア・トルンカツリノイデスについて、世界の45地点で採取した約1200個体の遺伝子を詳しく調べた。殻の形は似ているものの、5種に分かれることが分かった。右巻きと左巻きの両方いる3種を調べたところ、巻き方向と生息地の水温は無関係だった。 氏家研究員は「今後、有孔虫を人工繁殖できるようにして生態を明らかにし、どんな遺伝子が右巻きと左巻きを決めているのか明らかにしたい」としている。(長野県、信濃毎日新聞社)
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