AIJ投資顧問(現MARU)による年金資産消失事件で、前社長浅川和彦被告(61)らに実刑判決が出た18日、被害に遭った県内の厚生年金基金関係者らは「懲役15年でも短いくらいだ」と憤り、やり切れなさを口にした。失った資産の回復の見通しは薄く、負担は加入する従業員らの老後の暮らしに重くのしかかる。「とにかく有り金を返してほしい」。痛切な声も上がった。 計248億円をだまし取られた全国17厚年基金のうち、最高額の約65億円の被害に遭った県建設業(長野市)。判決を傍聴した吉沢恒人常務理事は取材に「判決を読み直してから話したい」と慎重だった。基金はその後、コメントで「罪の重さを真摯(しんし)に受け止め、被害基金の被害回復にさらに協力すべきだ」とした。 判決は、被害弁済に充てられる浅川被告らの資産は現時点で約91億円と認定。被害に遭った基金は起訴された事件の17基金の他に約80あると指摘した。同被告らの資産は、これらの基金の被害弁済にも充てられる予定で、県建設業厚年基金の理事の1人は「戻るのはごく一部だ」と嘆く。 判決は3被告から約157億円を追徴するとしたが、約15億円の被害に遭った北信越管工事業厚年基金(長野市)の岡崎博史常務理事は「被害回復を図りたいが、(追徴金は)絵に描いた餅にならないか」とみる。 県内に事務所のある10厚年基金のうち、AIJに資産運用を委託したのは8基金。2011年度末時点で、現役社員ら加入者は計約3万6千人、退職者ら年金受給者は計約2万8千人に上る。約9億円の被害を受けた県病院厚年基金(松本市)の加藤晴久常務理事は「だまされた人たちは大変な目に遭うのだから、(判決の刑期は)心情としては短い。有り金全部を返してほしい」と訴えた。(長野県、信濃毎日新聞社)
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