北アルプス白馬岳(標高2932メートル)で2006年に熊本県と福岡市のツアー客4人が死亡した遭難事故で、県警捜査1課と大町署は20日午前、業務上過失致死の疑いで、このツアーを企画し引率した福岡県大牟田市の田上和弘・山岳ガイド(56)の書類を地検松本支部に送った。 県警によると、山岳遭難をめぐりガイドの刑事責任を問うのは異例。この事故をめぐっては、死亡した遭難者の遺族が田上ガイドに損害賠償を求め提訴し、昨年12月、福岡高裁の控訴審で6500万円を田上ガイドが支払うことで和解が成立している。 送検容疑は、田上ガイドは06年10月7日、悪天候となる中、福岡市内の登山用品専門店を通じて募集したツアー客4人を引率し、富山県の祖母谷(ばばだに)温泉を白馬岳山頂近くの白馬山荘に向かって出発。雨から吹雪となる悪天候下、途中で引き返さずに登山を続けた過失により、同山荘近くでツアー客4人を凍死させた疑い。 田上ガイドは「そこまで天候が悪くなるとは思わなかった」と供述しているという。 死亡した4人は熊本県大津町の無職小場佐香代子さん(53)、熊本市の無職渡辺和江さん(61)、ともに福岡市で無職の古賀利枝さん(66)と古賀純子さん(61)の姉妹=年齢はいずれも当時。ツアーにはほかに、サブガイドの女性とツアー客の女性計2人がいたがいずれも軽傷だった。田上ガイドにけがはなかった。 捜査1課などの調べによると、登山ツアーは5泊6日の日程で計画。06年10月7日、一行が午前5時すぎに祖母谷温泉を出発した際、低気圧の接近に伴って天気は小雨。同10時ごろ、白馬岳に向かう尾根の途中にある避難小屋にも立ち寄った際も雨は降っていた。その後、雨は吹雪に変わったという。 県警は事故発生後まもなく実況見分などを実施。事故発生時の天候状況と変化などを確認するため、複数年にまたがって、同じ時期に実況見分を実施するなどしたため、立件に時間がかかったという。(長野県、信濃毎日新聞社)
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